任天堂は、倒れたままなのか? --- 小宮 自由

寄稿

ポケモンGOが大変流行っており、ついに日本のゲーム業界が世界的にヒットするスマートフォンゲームをリリースしたかのように思える。しかし実態はそうでない。ポケモンGOにより任天堂は本格的にIP管理会社としての道を着実に歩み始めた。

そもそもポケモンGOの開発・販売は任天堂でなくNianticという法人が行っており、任天堂は同社の株を10%程度しか保有していない(2016年7月時点)。このため、任天堂の株価はポケモンGOリリース時に急騰したが、その後下落した。つまり任天堂は、インターネット上でのゲーム配信プラットフォーム(STEAMのような)を取ることを放棄したばかりか、スマートフォンゲーム開発の為の組織を作ることも放棄したと取れる。

私は数カ月前、任天堂の社員と「今後任天堂はどのような戦略を取っていくべきか」というテーマで語り合った。私は「ゲームコンソールに依存し続けるべきではない。まずはスマートフォンプラットフォームでゲームを開発・販売できる体制を整え、並行してSTEAMのような配信プラットフォームを作る。そうやって任天堂はインターネット上のプラットフォームを握るべきだ」という意見をした。

しかし実際は、任天堂は自社のプラットフォームを作らず、版権をライセンスする道を選んだ。これは、任天堂が自社だけではプラットフォームを作りきれないという弱さを露呈したものと私は考える。任天堂は弱くなった。

注:ポケモンは株式会社ポケモンの著作物であり、任天堂は同社の株を1/3程度しか保有していないが、任天堂がポケモンに初期から現在まで多大な影響力を有していることを考慮し、この記事では主語を任天堂として記載した。

株式会社アットメディア 研究員
小宮 自由(こみや・じゆう)
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