女性都知事を生んだ男たちの無神経

石原、森、鳥越の3氏が“貢献”

小池百合子氏を都知事に当選させた裏には、様々な原因があるでしょう。そのなかでも私は男社会のあまりもの無神経さが小池氏の勝因、男性候補の敗因につながったと、思っています。

思わず絶句したのは、石原元知事(83)の発言「大年増の厚化粧の女には任せておけない」でした。男女差別発言ですし、セクハラ発言ですよ。企業で上司が年下の女性にこんなことをいったら、その上司は懲戒解雇に相当します。口が滑ったではすまない罪深い発言です。女性を怒らせたことは間違いありません。ご本人が「顔にアザがあるからなんですよ」とおっしゃるのを聞くと、石原発言は二重に罪深いですね。

作家でもあり、多数の著書があるにしては、言語力が恐ろしく貧困ですね。ベストセラーになっている「天才」(田中角栄論)で、いい気になってしまったのでしょうか。公職についていないから謝罪しなくてもいい、と今も考えているのですか。セクハラ発言を諫める社説を書く新聞があってもよかったでしょう。

森元首相の失態の数々

小池新知事が対決することになる東京五輪組織委員会の森喜朗会長の発言もひどかったですね。「小池さんは全体をよく見ていただきたい。よく勉強していただきたい」まではともかく、「私はボランティア(奉仕の意味か)のつもりでやっている」は、これも無神経ですね。

無報酬で引き受けているという意味ですか。組織委員会のトップがボランティアのつもりで委員会を動かしているのであれば、無責任な話です。安倍首相の直々の指名でしたよね。期待に反して、大会予算規模(総2兆円)のいい加減さ、新国立競技場の建設費、五輪エンブレムの選定のやり直しなど、この人物の失態は数知れません。

五輪予算を徹底的に洗いなおそうとしている新知事に対して、森氏は同格の立場にあります。「私はボランティアのつもり」は、どこか人をなめています。「よく勉強してもらいたい」は、本来なら森氏に向けられている言葉です。選挙後の発言にせよ、男の無神経さが際立っています。ひどい言語感覚は直る兆しはありません。

キャスターがよく務まった鳥越氏

週刊誌が書いた鳥越氏の女性スキャンダルも、女性票を小池氏に回すのに貢献しました。もともとこの人は、当選するつもりなんかなかったのではないですか。島嶼部での消費税引き下げにせよ、都政とは関係のない原発廃炉の発言にせよ、無責任な発言が多すぎる候補者でした。これでキャスターがよく務まりました。野党4党の連携をからかうために、推薦を受けたと思いたくなります。

英国では女性首相が選ばれ、米国では初の女性大統領の誕生もありえます。日本では初の女性都知事です。安倍政権が一億総活躍社会を看板にし、女性を引き立てる格好はとっています。それに対して、都知事選でみせた老いたる男性たちの無神経さは、総活躍社会が名が泣きますね。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2016年8月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。