スーパーメジャーの2Q決算内容

岩瀬 昇

スーパーメジャー各社は7月末に2016年第2四半期(2Q16)の決算を発表した。原油価格は4月初めの30ドル台半ばから6月末には50ドル近くまで上昇していたが、発表する7月末には再度40ドルに向かって下落していた。

各社の部門別純益は次のようになっている。なおシェブロンが予想外の赤字決算だった(単位:億ドル)。

会社名  エクソン シェブロン シェル    BP
上流     2.94           ▲24.62    ▲19.94        0.29
国際ガス    –              –     9.82         –
下流     8.25           12.78    14.90        15.10
化学品    12.17         –     2.27        –
合計     17.0            ▲14.70   11.76          7.2

各社にはそれぞれ特有の事情があり一般化するのは危険だが、あえて概観すると、探鉱・開発・生産部門である「上流」が苦戦しており、精製・輸送・販売部門である「下流」が好調ということだ。化学品もまた好調である。

だが、最近ガソリンに代表される石油製品の需給バランスの悪化とそれに伴う価格下落から、原油価格も大幅に下落し、「弱気市場(bear market)」に落ち込んでいる。これは、将来「下流」部門も採算悪化に陥るリスクを包含しているといえよう。

したがって、5月に起こったカナダの山火事のような、想定外の供給阻害が発生しないかぎり、リバランス(需要と供給の均衡化)への道は険しいものとなり、石油会社各社の決算はさらに厳しいものとなろう。

各社がHPで発表している2Q16決算内容から興味深い点をいくつか紹介しておこう。

シェールは中小の生産業者の天下、と認識されているが、エクソンも2009年に410億ドルで買収したXTOエナジーを通じて参画している。エクソンの今回の発表からは、シェールオイル・ガスの生産量は、2013年第1四半期の石油換算5万B/D(BOED)から、1Q16には18万B/Dに増加していることが分かる。エクソンの総生産量は約400万BOEDだからまだまだ比重は小さいが、将来、世界各地でシェールの開発が可能になった時には、XTOの持つ技術的知見が重要になってくるとみられている。

ライバルの多くが収入以上の投資を余儀なくされてい中、エクソンは事業収入(Cash from operation)が55億ドルでCapex(資本投資)が52億ドル、と健全だった。

予想外の赤字決算となったシェブロンだが、上流部門では、生産量が27%(68.2万BOED)の米国の赤字が11.13億ドル、73%(185万BOED)の米国外が13.49億ドルの赤字と、米国の不調が目立つ。また、液体分(原油+天然ガス液)の販売価格は、米国がバレルあたり36ドルだったが、米国外では40ドルだった。

2016年前半年(1~6月)の事業収入は37億ドルで、Capexは120億ドル。

シェルは、他社にみられない「国際ガス」を一部門として決算発表しているように、LNG事業で突出した地位を占めている。今年2月に手続きが完了したBGの買収効果もあり、2Q16のLNG販売量は1,425万トンだった。ちなみに日本の年間輸入量は約8,700万トン。

2Q16の事業収入は23億ドルで、Capexは63億ドル。
また、2Q16の原油・ガスの生産量は350.8万BOEDで、BG買収効果が76.8万BOED。

BPは、2011年に引き起こしたメキシコ湾暴噴事故に関し、ようやく米国連邦・地方政府等との補償交渉が決着した。延べ6年間の累計負担額616億ドル。

シェブロン同様、上流部門は米国が絶不調。総生産量209万BOEDの内、米国は32%の66.8万BOEDだが3.05億ドルの赤字、一方、米国外は140.2万BOEDで3.34億ドルの黒字だった。

また2Q16の事業収入54.94億ドルに対しCapexは39億ドル。

はてさて、年末を笑顔で迎えられるのは誰になるのだろうか。


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年8月2日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。