商売というもの

松下幸之助さんは、商売ということで様々言われています。例えば「商売とは、感動を与えることである」と言われたり、また「商売は成功できるようにできている。成功しないのは成功するようにしていないだけだ」とも言われています。

あるいは、御著書『人間としての成功』の中では「商売の使命」と題して、「やはり大事なことは、暮らしを高めるために世間が求めているものを心を込めてつくり、精いっぱいのサービスをもって提供してゆくこと、つまり、社会に奉仕してゆくということではないだろうか。(中略)そしてその使命に基づいて商売を力強く推し進めてゆくならば、いわばその報酬としておのずと適正な利益が世間から与えられてくるのだと思う」と述べておられます。

商売というものは相手のある世界ですから、相手が望むものを持って行き、結果としてその対価を貰って、そこに一種の適正利潤も発生するわけで、之が商売の基本です。相手が買ってくれるか否かはイコール、相手の興味を引くもの・相手が必要だと思うものを相手にぶつけているかどうかに因りましょう。それ如何により初めて商売というのは発生してくるわけで、相手のニーズを読むということが求められます。

世に人は多種多様でマスを対象にする商売から、極少数を対象にする商売があろうかと思います。例えば、マス対象のそれは割合在り来りなもので、生活の中で殆どの人が必要とするものを提供しており、大して難しいと感じません。

では、作ったものがどうしたら成功裏に売れるかと考えると、言うまでもなく一つには商機を狙い、それを掴むということが挙げられましょう。あるいは、同じように見えて品質に違いがあるとか、品質レベルは同じだが価格に違いがあるとか、といったこともありましょう。

そういう中で商売が出来るかどうかが、決まって行くわけです。商品の価格・クオリティ・アベイラビリティ、そして販売チャネル等々も含めて全てにある意味気を配って行かなければ中々、商売というのは上手く行かないものです。

「自分は世間とともにあるのだ、また世間の人びとはまことに親切に自分を導いてくださるのだというような考えのもとに、お客さんなりお得意さんに接してゆくならば、商売というものは非常にしやすいものになると思う」と松下さんは言われていますが、全く同感です。しかし、そうして接して行くことが出来ない人が、意外と多くいるように感じます。

ネット社会の現在では、カスタマー・サティスファクション(顧客満足度)を如何に高めるかに配慮しなければ、生き残って行けません。また、御客様のニーズも極めて多様化し、単純なマスプロダクション・マスプロモーションでは、成功するのは困難になってきています。

例えば、アマゾンなどでも巨大なウェアハウスを幾つも作り、品揃えを徹底して多様な顧客ニーズに備えています。また、最初からニッチなマーケットだけを狙った店も出現しています。

松下さんの時代とは隔世の感があります。しかし、松下さんが言われるように、商売の本質は相手のニーズを読むことで、それは不変だと思います。

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