写真は「ラジオNIKKEI」でパーソナリティをつとめる日下部。
マンションの物件選びは、従来は立地が優先されてきたが、昨今は耐震や防災への意識の高まりもありその様相は変化している。特に、マンション管理とコミュニティはマンションの価値に大きな影響を与えるともいわれている。
『知っ得・納得・マンション管理』(ラジオNIKKEI)のパーソナリティをつとめ、「マンション管理員検定協会」理事長でもある、日下部理絵(以下、日下部)氏は、マンション価値には、管理員の関わり合い方とコミュニティが大きな影響を与えると指摘する。
■管理員はマンションの顔である
日下部は、2001年度に資格制度が始まった国家資格「マンション管理士」試験の一期生である。資格取得後、マンション管理会社の勤務を経て、マンション管理士として独立する。
「仕事やプライベートで多くのマンション管理員(=管理人と同義。本稿では管理員で統一)と会う機会があったのですが、その時に感じたのが、マンション管理員の存在感でした。住民、管理会社、専門家の立場から見ても、管理員の対応が良い物件は、その後の安心感が増して居心地が良くなるのです。」(日下部)
「ところが、管理員の能力は、個人の資質に負うところが大きく、住民もよく理解できていません。本来、管理員は頼れる存在なのに仕事内容をきちんと把握していないことは、非常にもったいないことだと思います。」(同上)
そもそも、管理員の仕事とは何なのだろうか?
「基本的な管理員さんの仕事は、「受付」、「点検」、「立会」、「報告連絡」の4つの業務に加えて属さない補助業務が挙げられます。実はかなり幅広い業務を網羅しなければいけないのです。」(日下部)
日本のマンションは平均して1棟50戸程度といわれている。100戸未満だと清掃員が雇用されることは稀少なので、多くの場合、清掃員の役割を管理員が担うことになる。さらに形態によっては、マンションの代表として地域の町内会などに出席する場合もある。「管理員=楽な仕事」というイメージが強いが、実際はかなり気をつかう仕事のようだ。
「管理事務室に座っている印象がありますが日々の生活を支えているのは、管理員というわけです。困りごとやトラブルがあった際に、まず問い合わせるのは管理員です。そのように考えれば、管理員はマンションの『顔』といっても過言ではありません。」(日下部)
■海外での管理員の地位は総じて高い
海外における管理員の地位は総じて高いそうだ。米国であれば、有能な管理員は他からヘッドハンティングされる対象であり、韓国では公的資格も存在する。もし、一流ホテルのフロントのような対応ができる管理員ができれば、マンションそのものの価値が上がると日下部は述べている。
「管理員はマンションを知り尽くしている存在です。また、自らが働くマンションに愛着を持つ管理員は多いと思います。東日本大震災の時には、勤務先のマンションに泊まった管理員が多かったと聞きました。自宅に帰ることもできたはずですが、一戸一戸に声をかけてまわった方も多いと聞きました。」(日下部)
「私は、管理員の属人性がマンションに与える影響は小さくないと考えています。マンションは新築時から2~3年程度で、物件のカラーを持つようになるといわれていますが、これは管理員の与える影響が大きいのです。」(同上)
実際に、管理員が住民の顔を覚えていたり、元気よく挨拶を交わすような人であれば、住民同士にも自然に挨拶が交わされるようになり、良質なコミュニティが醸成される。良質なコミュニティは住民を安心させる効能があるとのことだ。
「マンション全体のマネジメント業務を管理員が担っていますから、結果的に、物件のカラーを方向付けるトリガーになることは充分にあり得るわけです。」(日下部)
■本日のまとめ
日下部は、良いコミュニティについて次のように述べている。「良いコミュニティとは、住民が管理員に感謝し、管理員が住民に感謝するサイクルである」。管理員のマネジメント能力が高ければ、自ずと住民から感謝の気持ちが生まれ、好循環を生み出す機会になるそうだ。
「マンションの生活に管理員は大きな影響を与えます。住民が、もっと管理員に関心をもち理解しようとすれば、そこには新しいコミュニティが生まれます。新しいコミュニティの存在はマンションの価値を高めるのです。」
皆さまの住んでいるマンションは如何だろうか?この機会にチェックをしてみては。
<参考書籍>
『マンションの設備・管理が一番わかる 』(技術評論社)
尾藤克之
コラムニスト
PS
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