なぜ「金融の専門家」には不動産投資が理解できないのか?

内藤 忍

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メガバンクを筆頭に国内のほとんどの銀行が、10月から運用型生命保険の手数料の開示をはじめるようです。金融庁からの要請に屈した結果ですが、投資信託にせよ保険にせよ、金融商品の場合は手数料を下げることが重要ですから、このニュースは個人投資家にとっては朗報です。

投資家が購入する投資商品の価格は、一般に

購入価格 = 仕入れ価格 + 手数料(マージン)

で決まります。金融商品の場合、手数料にあたるのは為替手数料や投資信託の販売手数料・信託報酬です。一方、不動産にも仲介手数料(3%)があって、この部分の価格破壊を目指している「不動産テック」の会社が登場しています。

しかし、金融商品と不動産には価格決定に根本的な違いがあることを見逃してはいけません。それは仕入れ価格の違いです。

金融商品は市場が効率的です。例えば、為替レートであれば、世界中どこに行ってもレートには1銭以下の「歪み」しかありません。新興国に出かけてい けば、1ドル=80円でドル調達できるといったことは無いのです。だから、仕入れ価格は横並びです。手数料を下げるしか購入価格を下げる方法は無いので す。

ところが不動産は金融商品とは大きく異なります。仕入れ価格に大きな「歪み」が発生して、安く仕入れられることが珍しくないのです。

例えば、1000万円の市場価値がある物件が、売り手の事情で800万円で仕入れることができたりします。その場合、100万円の利益を乗せても、 まだ市場価格より100万円安いということになります。このようなお宝物件は、レインズのような不動産情報サイトやネット上には出さないで、未公開物件と して売買されていきます。

実際、日本財託など大手の中古ワンルームマンションの販売物件は、ほとんどの会社が自社が売主になっている「未公開物件」で、仲介手数料を取っていません。仕入れ部隊が、安い物件を探してきて、自社でリスクを取って保有し、利益を乗せて投資家に販売しているのです。

例え、1000万円の物件の仲介手数料が無料になっても30万円程度です。それよりも物件を30万円以上安く仕入れることの方が効果があります。不動産取引においては、3%程度の手数料よりも、仕入れ価格の違いの方が重要になるケースが圧倒的に多いのです。

不動産の仕入れ価格は、1つ1つの物件毎に相対で交渉していきます。安く仕入れる仕組み(人脈、資金力、情報、交渉力)を持っている会社が、仕入れ価格を引き下げることができ、手数料を削っても利益を上げることができるようになるということです。

だから不動産投資を考えている人は、金融商品のように手数料が安い会社と付き合うのではなく、良い物件を安く仕入れる力のある会社と付き合うべきなのです。2つの投資対象の違いを理解することが失敗しない資産運用に大切です。不動産投資をこれから始めようという人は、新刊「60歳から毎月20万円入る術」を読んでみてください。

お寿司のネタを築地で仕入れるお店と、漁師から直接買い付けるお店では、仕入れ価格がまったく違うのと、何だか似ています(品質にも差がありますね)。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年9月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。