恐るべし!中国のパラリンピックの政治活用

中村 仁

群を抜くメダル獲得作戦

リオデジャネイロ・パラリンピックが間もなく終わります。鋭い時代感覚を持つ友人が「中国のメダルの獲得数は恐るべし。それに比べ日本は見る影もない。この差は一体、何だろう」とのメールを送ってきました。どうも中国には外交的、政治的目的が潜んでいるようです。さらに「日本のメディアはなぜ選手の活躍にしか目がむかないのだろうか」というきつい指摘です。確かにメディアもスポーツ記事に終始していますね。

パラリンピックを含め、五輪は平和の祭典ですね。そういう考察だけに終わってはいけませんね。「おもてなし」というレベルで喜んでいてはね。

メールを3度ほどもらい、最初は「中国は金銀銅の合計で172個、日本16個。10倍以上の差をどう考えたらいいのか」でした。パラリンピックまでは関心がなかった私が「うーん」とうなっていると、続報がきて「中国は191個に増えたのに対し、日本は19個、さらに差が開いた」とのことです。

閉会直前の直近のデータでは、「中国217個、うち金94個。日本は19個、金ゼロ」との知らせです。新聞をひっくり返してみると、その通りなのですね。世界1位で、日本はずっと下のほうです。参考までに付記しますと、2位は英国で中国の半分、3位ウクライナ、4位米国、5位豪などとなっています。

今年だけの成績ではない

4年前のロンドン大会では、やはり1位は中国で231個、2位ロシア102個(ドーピング問題で今回は出場停止)、3位英120個、4位ウクライナ84個、5位米89個、ずっと下に日16個でした。ということは今年だけの異変ではないのですね。国家としての意図を感じ取る必要がありますね。

本番のリオ五輪では、メダル獲得数の1位米が121個(金46個)、2位が英67個(金27個)、3位が中で70個(金26個、金が少ないので英より下位)など。ついでに日本は41個(金12個)で6位でした。中国がパラリンピックにいかに力を入れているかが分かります。本番の五輪よりパラリンピックでのメダル数が多いのは、障害の種類、程度によって、競技種目が区分され、結果として種目数、出場選手が増えるからです。

中国はそこを巧妙について、種目ごとに有力選手を育成し、送りこんでいるのかもしれません。今大会では528種目にのぼり、参加国の総出場選手は4300人となりました。日本は132人と、少ない数です。こんなことも影響しているのでしょうか。用具も年々、進歩しているので、健常者の記録をしのぐ種目も増えてくるでしょう。練習、訓練の努力が報われる余地は本番の五輪以上かもしれません。

障害者対策との結合が必要

高所からみた友人の分析を紹介しますと、「中国は総人口に比例して、相対的に障害者の人口が多い。世界最悪の環境汚染も影響しているのだろう。国民の不満封じ込めのためにも、障害者対する支援をアッピールする必要がある。そのことが国家の国際的イメージを改善することにもなる」。そうなのでしょうね。

中国、欧米には戦争による障害者も多く、障害者スポーツは国家政策と一体なのかもしれません。

日本の場合、障害者スポーツを強化する予算がありませんでした。厚労省所管であったため、五輪向けの強化予算がとりにくかったのでしょう。2011年に文科省所管のスポーツ基本法ができて、予算がつくようになったそうです。五輪は文科省の所管ですからね。これから力をいれていくのでしょう。

メダル獲得数はGDP,人口、国土の広さに比例するそうです。日本のパラリンピックが不振だったのは、国家予算面での支援体制が弱かった結果でもあるのでしょう。メダリストの報奨金も五輪とパラリンピックでは何倍かの格差ありますね。安倍さん、2020年の五輪に臨みたいなら、五輪の政治学をもっと研究したらどうですか。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2016年9月17日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は中国パラリンピック委員会公式サイトより)。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。