NY市で、あなたの命はどれだけの価値があるか?

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ニューヨーク市チェルシー地区で17日の午後8時半頃、金属片入りの圧力鍋が爆発する事件が発生し29人が負傷する事件が発生しました。その約12時間前にあたるニュージャージー州では、チャリティ・イベントの直前にゴミ箱内のパイプ爆弾が爆発。同時多発テロ事件15周年目の約1週間後に起きた事件はアフタニスタン出身のアメリカ人、アフマド・カーン・ラハミ(28歳)容疑者が逮捕され一旦の収束を見ています。

当時、筆者はミッドタウンで親族のメッセージを受けてそのニュースを知りました。事件に巻き込まれたのではないかと心配して電話してきたその声は、同時多発テロ事件を経験した者らしく神経質に震えていたものです。

事件2日後の午後だというのに、23丁目の6アベニューから西側の閉鎖は継続。

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(出所:My Big Apple NY)

死者が出なかったことが不幸中の幸いだったこの事件を受け、ふと筆者の頭をよぎったのは犯罪被害給付制度です。

あくまで筆者が知り得たケースで申し上げると、ニューヨーク市は犯罪で命を奪われた被害者に給付金を支払います。日本の場合、警察庁によると一定の生計維持関係遺族がいれば872.1万〜2,964.5万円、それ以外で320万〜1,210万円でした。では、ニューヨーク市はどうでしょうか?

5,500ドル(約55万円)です。

しかも支払いは半額ずつで、葬儀など全て終了し領収書を提出して漸く残りの半額が支払われるといいます。ただし、被害者家族が市民団体など他者から援助を受けると判明すれば、NY市は給付金を一切支払いません。住宅ローンや学生ローン、クレジットカード・ローンが残っていようが、お構いなしです。ちなみにローン条項次第で返済は免除されますが、それまで受け取った融資額に対し遺族が所得税を支払う羽目になるとの話を聞きました。遺族にとっては、愛する者の死という精神的な苦痛に加え財政負担が伸し掛かるというわけです。

寄付や援助である程度工面できるのならNY市の判断は適切、と考える人もいるかもしれません。しかしNY市から給付されるはずの5,500ドルは、ほぼNY市に戻るというマッチポンプ状態だから驚きです。蘇生・救命措置に掛かった医療費を負担するのは、他でもない遺族ですから。その金額は、5,500ドルを超えるケースが少なくありません。ニューヨーク市のヘルス・アンド・ホスピタルズ・コーポレーション(HHC)から届く請求書の白さが、目に沁みます。

州・地方自治体ごとに犯罪被害給付金は異なって来るのでしょうが、自由の国で命の値段がフリーに近いという事実は胸に刻み込んでおきたいところです。

(カバー写真:My Big Apple NY)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年9月26日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。