ロッテ重光昭夫氏の逮捕状請求!球団の先行きは?

新田 哲史

あすにもXデー到来か

どうも新田です。念のため、I love Marinesです。そんなこんなでXデーがあすにも訪れそうなんですが、サブロー選手の引退試合に水を差すタイミングでなくてよかった。

韓国ロッテ会長を拘束へ 検察が逮捕状請求聯合ニュース

重光昭夫@事情聴取0920

※画像は中央日報サイトより

上記の記事はきのうの午前中のものですが、夕方にアップデートされた続報によると、あす28日に裁判所が逮捕状を出すか決定とのこと。韓国ロッテ側も逮捕については諦めモードらしく、記事では、先日の取り調べでの否認ぶりから裁判での徹底抗戦を予想しておりますが、Xデー到来後はロッテグループの経営への悪影響は必至でしょう。

なお、創業者の武雄氏、長男の宏之氏が立件(在宅起訴)の方向の一報は、先日も書きましたように「流動的ではないか」と見る向きも結構強かったので、特に宏之氏に関しては、やや意外でした。武雄氏と日本にいる内縁の妻・娘との株相続を巡り、上場もしていない中で「脱税」といえるほどの算定根拠がどうなのか。宏之氏に至っては、韓国サイドで正規の社内手続きを経ての報酬らしく、「会社を私物化した創業者一族を一網打尽にすべき」という韓国内の世論に、捜査当局が迎合しちゃったような印象です。司法の判断がどうか冷静に注視したいところです。

球団身売り説の浮上は必至

それで、某民放の情報番組のスタッフからも尋ねられたんですが、「日本の消費者への影響はどうなりそうですか?」が関心の深いところ。「商品パッケージが変わるんでしょうか」と尋ねられた際にはずっこけてしまいましたが(笑)、一番わかりやすい事例として私が挙げて先方が興味を持ったのは、やはり千葉ロッテマリーンズの身売り説でしたね。

ただ、本件は、単に一般的にわかりやすいというだけではなくて、球団の今後を占うことは、Xデー後を展望する意味でも意義はあると思います。夕刊フジの江尻編集委員あたりが本日号で書いてしまう前に先出ししておきますか。

以下は、球団の身売りに関してリアルタイムのインサイダー情報に基づくものではなく、野球記者時代に取材した情報、および、ここまでの公開情報を分析しての「見立て」としてお読みいただきたいのですが、結論からすると、重光家、特に韓国に拠点を移した後も球団経営に意欲的でオーナー代行の座を手放さなかった宏之氏が経営中枢の座を離れるからには、球団の行く末がかなりビミョーになってくるのは間違いありません。

週刊実話の記事では、球団が、毎年20億円の赤字を抱えている中で、「武雄氏はこれまで『日本での成功者の証』である球団売却には、頑としてして首を縦に振らなかった」と書いておりますが、これには懐疑的です。というのも、ロッテ球団の成り立ちからして、そもそも前身の親会社・大映の経営難に際し、安倍総理の祖父、岸信介元総理の仲介で球団を支援(今でいう命名権購入)、後に買収という流れだったので熱望しての球界参入だったわけではありません。

過去にも検討された身売り

実際、こちらのスポニチの記事にもあるように、10 年以上も球場に足を運ばなかった時期があるわけですが、重光武雄さんが球団経営にヤル気ナシ男だったとファンが判断できる歴史的事実について「生き証人」が今も球界でご活躍中です。

大阪日日新聞が書いてますが、80年代後半、武雄さんは、親交のあったダイエーの名物経営者、中内功さんとの間で球団売買の話が浮上しました。その折、ダイエー側の実務担当者だったのが、瀬戸山隆三さんです。のちにロッテも球団社長を務め、いまは漂着先のオリックスで実質の球団トップです。

瀬戸山VS古田

写真はベースボールマガジンより引用

誰ですか。「近鉄オリックスの合併騒動のとき、古田選手に握手を求めて拒否られたオジさんだよね」なんて言っちゃかわいそうじゃないですか。

まあ、結局このときは破談になって、ダイエーは南海ホークスのほうを買収したんですが、その後、時は流れて2004年、その古田選手との握手拒否事件があった、球界再編騒動のみぎり、ダイエーとロッテによる球団合併の構想が発覚します。

その頃、浪人中だった瀬戸山さんが突然、武雄さんのオファーでロッテ球団の代表になるわけですが、一部のロッテファンからは当時「合併手続きを見越した人事だろ、これ」というツッコミが入りました。もう時効だと思うので、瀬戸山さんは、そろそろ実際にどうだったのかお話しになっても良いのではないかと思いますが、どちらにせよ、武雄さんがマリーンズを手放すことを過去に何度も模索していた事実は確かです。

しかし、野球にヤル気ナシ男だった父に対するストッパー的な存在だったのが、まさに、明日逮捕されそうな昭夫氏でした。もともとスポーツビジネスは畑違いながら、川崎から千葉に球団を移転する際の実務を担当したのを機に関心を深め、その後、韓国に拠点を移した後も、文字通り「オーナー代行」の座は手放しませんでした。

QVCマリンフィールド

球団を保有し続ける宣伝効果は残っているのか?

過去の内幕話はここまでにして、もう少し客観的な視点で経営環境を指摘すると、赤字覚悟の球団経営をするメリットは、まさに赤字を損金扱いできる宣伝広告効果に他なりません。特に個人カスタマー向けの業種で爆発的に知名度を上げたい新興企業にとって、東証一部上場の次に、憧れの社会的地位となるのが12の日本企業にしか許されていないまさにNPB参入です。かつてのオリックスしかり、近年の楽天、ソフトバンク、DeNAしかり。

しかし、イノベーター理論的に言うと、知名度がキャズム越えをし、全国津々浦々のレイトマジョリティーにまで社名や商品情報が行き渡った後まで毎年数十億の投資をする価値があるのかどうかがポイントになるわけですが、参入から40年以上が経ち、成熟産業の菓子市場にあって爆発的な宣伝効果を求める意味もなくなっているのは確か。商圏としての千葉は小さく、球団単体の黒字化も厳しく、かといって二軍の施設は埼玉に置いたままで地域密着の理念と行動が微妙にかみ合っていないように見える中で、会社経営的には「嗜好品」としての球団を持ち続ける意味があるのかどうか。

だから、マリーンズの身売り話は、夕刊フジの江尻さんを筆頭に身売り説を書き立てるタブロイド紙、週刊誌の記者の定番ネタになってますし、スポーツビジネスの専門家からも球団保有の意義低下を指摘されるわけです(参照:「パ・リーグがプロ野球を変える」)。

球団の今後を占うシナリオ

で、昭夫氏が訴追されるなら身売りのストッパーが外れる可能性もある今後はどうなるのでしょうか。

ユニクロやリクシルなど球界参入の噂が毎度のごとくある中で、いくつかある売り手側のシナリオとしては、まずこんなところ。

①昭夫氏無罪で経営復帰なら現状維持の可能性は高い

②昭夫氏有罪で経営を離れても球団のブランド価値を重視して現状維持もありうる

③昭夫氏有罪、もしくは不在中にロッテHDの日本人経営陣が「創業者排除」に乗り出して経営の大幅見直しを進める→球団身売りの可能性

③についてはこれまで書いているように昭夫氏個人のHD持株比率は1%程度なので、あくまで理論上ですが、HD取締役解任のクーデターもあり得ます。万一そうなった際、留守を預かる経営陣は、HD佃孝之社長ら銀行出身者が実権を握っており、コスト重視で「不採算部門」である球団を切る可能性もないとは言えません。

なお、球団社長として現場を預かる山室晋也さんも、みずほ銀行OB(しかも元執行役員)。スポーツ紙から「半沢直樹」扱いされるなど経営改革に燃える熱い社長キャラとしての評判はあるのですが、いざ身売りとなれば“管財人”にシフトしやすい体制です。

もう一つのシナリオとしては

④追放された兄の重光宏之氏が経営復帰を果たした場合 → とりあえず現状維持?

これには条件があって、宏之氏が韓国で訴追されても無罪もしくは軽微な処分で帰還を果たし、なおかつ来年以降の株主総会でリベンジを果たすという数々のハードルを乗り越え続ければの話です。しかも宏之氏の野球経営観が分かる記事が見当たらず、歯がゆくも未知数ではありますが、「創業家の責任として混乱を収拾する」を大義に掲げている以上、当面は穏健にコトを進めると考えるのが順当かもしれません。

いい加減、字数が膨らんできたのと、夜が明けそうなのでこの辺にしておきますが、Xデーが勃発した場合、留守を預かる銀行出身の経営陣の動向が焦点となり、一番目立つ球団の存亡に注目が大いに集まるのは必至と言えそうです。個人的な結論としては「すぐには売られないが、売られてもおかしくはない」って感じですかね。ではでは。

<追記:9:50> スポーツ各紙の取材に山室球団社長が球団経営への影響を否定するコメントをしているようですが(日刊スポーツ)、現場としては、まあ、こういうしかないでしょう。ただ、昭夫氏が訴追された場合、重要事項の意思決定がこれまで通りにいかなくなるのは確か。以前、昭夫氏を取材した際に聞いた時には一定額を超える決済(金額は忘れました)についてはグリップを握っていたので、これからストーブリーグでお金が大きく動く時にどうなりますやら。

 

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