かつて号泣県議が話題になりましたが、あのビデオがたまに流れると今でも爆笑してしまいます。不正請求した手口も手口でしたが、お笑い芸人より面白いあのパフォーマンスに騙されて不正請求がなぜできるのかという本来あるべき議論は十分なされなかった気がします。
ここにきて地方議会とその議員が急速に注目されるようになりました。火付け役はもちろん、東京都であります。都知事選の時にふっと湧いて出た都議会のドンの威光、そして小池氏が知事に当選すると週刊誌はこぞって都議会の不正を暴こうと必死になります。呼応するように出てきた豊洲の盛り土の問題、さらに石原元都知事が詫びを入れ、週刊誌は更に後追い記事を書き続けています。
それと相前後するように富山県と市議会の不正請求事件は11人の辞職者が出て今でも増え続けています。産経によればわずか4万円の不正請求でも議員バッジを外した人がいるとのことであります。市議のドンは政務活動費を全部使い切らせ、その増額を目論んでいたようです。なんでもよいからとにかく予算を消化して翌年に新たに金を貰うという発想はいわゆる国を含めた予算の在り方にそっくりであります。
財務省の予算担当と酒飲み話をするとそのあたりの赤裸々で表にできないような話も多々出てくるのですが、一般的には予算を余らせると翌年の予算の申請に影響が出るので基本スタンスは「足りません、だからもっと予算をください」という姿勢であります。
これが地方議員でも同様で政務活動費は目いっぱい使いましょう、そうすれば仕事をしているように見えるし、増額への期待もあります、という身内の都合と護身の理論そのものであります。
では政務活動費なり給与なりを支払った分だけ仕事をしているのかといえば10月3日の毎日新聞が千葉県で起きているばかばかしいことをすっぱ抜いています。記事のさわりは「政務活動費(政活費)を充てた海外視察で視察団全員が同じ体裁、文面の視察報告書を提出していた千葉県議会で、国内視察でも報告書のコピーが常態化していることが県議会への取材で分かった。2015年度は、少なくとも12件の団体視察に参加した計54人が、同じ体裁や同一の内容。充てられた政活費は計575万円に上った」とのことであります。
みんなでコピーというのは大学の講義のノートをみんなで廻すというのは覚えていますが、調査報告書とは試験の回答を皆で廻したようなものでしょう。これは学校なら停学ものです。しかも市民の代表者たる議員がろくに仕事もしないで政務活動費を無心するわ、提出物はコピーやらでいったいどうなっているのでしょう。すべての地方議会は厳しい監査を受けるべきでしょう。
議員はまじめな方もいます。特に新人さんなどは夢と希望をもって議員バッジをつけるのでしょうけれど実際には派閥や年長者の言うことを聞かねばなりません。新入社員が会社に入ったら「あれ、違うぞ」と思うのと同じです。ところが会社なら「思っていた会社と違うので辞めます」と言えますが、議員はそう行きません。選挙活動で多くの市民の応援を受け、期待を背負ったわけですから前にも後ろにも行けないどん詰まり状態にあるといえます。
となると地方議会に存在する問題の根源はサル山の大将が当然のごとく存在する事実でしょうか。これは日本の家父長制度と同じで何か問題が生じたとき、判断を下すのは年長者。そしてその判断が自己に有利なように仕向ける子ザル達の振る舞いであります。そこには市民から選ばれたという謙虚な姿勢は表向きで実態は自分の権力と地盤をいかに固めるかという身内理論そのものでしょう。
では、なぜ、そこまでして議員になりたいか、といえば「おいしい職業」であることは否定できないはずです。それゆえ、私はイギリスの議会のように議員とは名誉職で手弁当で頑張るような仕組みに改編しなくてはいけないと思っています。また、議員が多すぎるという議論も常について回ります。
カナダのバンクーバーの市議会の場合、11人しかいません。また、それぞれの議員が議会でそれぞれの強みのある分野で鋭い意見をするため、それをローカル新聞が取り上げ、各議員の活動の状況がよくわかるようになっています。日本の新聞で地方議員がどのような「活躍」をしたか、聞いたことがあるでしょうか?
国会議員のリストラについては折々話題になりますが、私は地方議会の問題の根は深いと思っています。これを機に様々な問題の洗い出しをして、市民がどのような地方議会を作るべきか、真剣に議論する時代がやった来たと思います。税金を無駄遣いにさせるわけにはいきません。
では今日はこのぐらいで。
岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 10月3日付より