写真左は筆者、右が水越浩幸氏(第333回)
これまで、何回かアゴラでネットTVの可能性について投稿をしてきた。そして今回、論より証拠ということもあり筆者自身がネットTVに参加してきた。従来では分かりにくかったポイントなどについても言及したい。
基本的な概況について抑えておきたい。総務省が発表している「民間放送事業者の収支状況」を読み解くと、既存メディアの衰退が顕著に現れている。特に広告予算の削減傾向が著しいことが理解できる。
さらに、サイバーエージェントとテレビ朝日の出資により設立された「AbemaTV」が市場を席巻しつつある。「AbemaTV」は、PC・スマートフォン向けのライブストリーミング形式によるネットTVである。10月5日には、専用アプリの累計ダウンロード数が900万を突破したことを公表している。
個人や中小企業によるネットTVも注目を集めている。ライブで生の雰囲気を届けられることに特徴がある。イニシャルコストが安いことで、多くの番組が開設されているが成功のポイントはどこにあるのか。
今回は、ネットTV「メディカツ(メディアコミュニケーション活用塾)」を運営する、水越浩幸氏(以下、水越)に効果的なネットTVの活用方法について聞いた。
■「ありのまま」を伝えることでフアン層が形成される
――水越は、動画の活用方法について聞かれる際に、ライブ動画以外に商品やサービスを紹介した2〜3分の短い動画をYouTubeにアップしていくことを推奨している。
「動画と聞くと、多くの方は一連の作業が必要だと思い込み、始める前から私には難しいと諦めてしまう方がいます。そこでわたしが皆さんにお勧めしている方法は、iPhoneや、iPadの動画活用です。iMovieという動画編集アプリを使用することで、撮影、編集、YouTubeへのアップロードが、一つの端末のみで完結できます。」(水越)
――YouTube動画には、展開するうえでどのようなメリットがあるだろうか。水越は次のように答えている。
「大きなメリットとして、『検索で見つけてもらいやすいこと』があげられます。YouTubeにアップロードすると数時間から数日でGoogleの検索結果に反映されます。検索結果に出てくるYouTube動画は、サムネイルが付いているため検索が容易で目立つのでクリック率が高まります。」(水越)
――次に具体的な運用方法について聞いてみよう。
「Googleで『武蔵小金井 メガネ ブランド』と検索してみてください。1ページ目にサムネイル画像のついた『メガネのマエダ』が表示されるはずです。クリックするとYouTubeの動画が再生されます。以前は、WEBサイトを持っているだけでした。情報を発信していなかったため、検索しても上位には表示されません。」(水越)
「そこで、毎日iPadで2本の動画を作成してYouTubeにアップするようにしました。同時に毎月2回店頭で、Ustreamによる1時間のライブ番組を始めました。YouTubeの動画だけではリアリティが足りないので、社長やスタッフが出演して『ありのままを伝えるライブ動画』を流していきました。」(同)
――効果はどうだったのだろうか。あくまでも一つの事例ではあるが、この結果は参考になるのではないかと思う。
「ありのままを伝えることで、コアなフアン層が形成されていきました。2ヶ月後から山口県、秋田県、和歌山県などから在庫の問い合わせが入り、メガネの注文が続々と入るようになりました。YouTube動画の本数は、現在1,000本以上になりました。」(水越)
■ネットTVはスタンダードになるのか
――個人的な主観ではあるが、Ustreamはトークとメッセージにタイムラグが生じる。技術的に防ぎようがない。そのため、番組を進行させるテクニックが必要になる。これは決して簡単はスキルではない。
また、Ustreamの画面には、番組中にたくさんのコメントが寄せられる。内容によってアドリブを加えたりメッセージを読み上げて盛り上げるなどのセンスも必要とされよう。つまり、ネットTVを運営するには進行させるテクニックが必須になるということである。
水越が運用しているメディカツは2010年5月に配信を開始した。番組の配信回数は、これまでに333回(2016年10月18日現在)を数える。
主な出演者は、「なんでも鑑定団」でおなじみの北原照久、歌手の岩崎宏美、異邦人で有名な久保田早紀、シンガーソングライターの杉真理、元巨人の篠塚和典、漫画家のかわぐちかいじ(順不同、敬称略)などの著名人も多数ゲスト出演している。
「動画は、声、表情、話し方、身ぶり、しぐさ、話題などから、その人の雰囲気をつかむことができます。編集して加工していないライブで伝えるメディアなので、より身近に感じることができ信頼感が高まります。」(水越)
かつてインターネットの黎明期に、WEBが情報発信のスタンダードになるとは夢想だにしなかった。例えば、当時の就活生には電話帳のように分厚い会社案内が山のように配布され、往復ハガキで会社説明会にエントリーをするのが一般的だった。そしてそれを誰も疑問にすら感じなかった。
果たしてネットTVはスタンダードになるのだろうか。今後のネットTVの動きに注目したい。なお、本日、水越が56回目の誕生日を迎えた。謹んでお祝いを申し上げたい。
参考書籍
『これからの中小店は「動画」で販促・集客しよう!』(同文舘出版)
尾藤克之
コラムニスト
PS
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