11月27日の参院財政金融委員会に日銀の黒田総裁と岩田副総裁が呼ばれた。ここでのやりとりがなかなか面白い。
日銀は9月21日の金融政策決定会合で「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を決定した。総括的な検証の結果、フレームワークを変更し、政策の軸足を「量」から「金利」に転換したのである。それまで岩田副総裁は量を増やすことにより、物価上昇を促せるとの説明をしてきたが、この点に関して質問が出た。
これについて岩田副総裁は、長期金利の操作目標の実現には多額の国債買い入れが不可欠であり、量の面を重視していることに変わりはないとの見解を示した(ロイター)。
長期金利を金融政策で操作できるのであろうかという前提はさておき、日銀は新ためて次元の違う金融政策を導入したわけではあるが、長期金利操作の前提に「多額の国債買い入れが不可欠」なのかどうかは疑問である。むろん長期金利をファンダメンタルズと乖離しても押さえつけるには量が必要かもしれないが、物価が前年比マイナスとなっているなかで、多額の国債買い入れが不可欠とは考えづらい。
岩田副総裁はこれまで量の効果を強調してきたが、長期金利操作の実現可能性とともに「私の考えも進化してきた」と語った。「進化」というよりも、説き伏せられた感もある。日銀は軸足を金利に戻さざるを得なくなったが、量があった上でのものということを前提に話しを進めたことにより、いわゆる原田審議委員などを含めたリフレ派も今回の政策に賛成した格好となった。しかし、それが進化であるのかどうか。
27日の参院財政金融委員会で黒田総裁は、長期金利を現行ゼロ%程度としている操作目標の水準に維持するために国債を売る必要が出てくるとは思っていないと語った(ロイター)。日銀が保有国債を売る必要が出てくるという場面は、長期金利がさらに低下してしまうことであるが、それに対して売りオペで対処することは当然ながら考えづらい。そもそもそれほど金利が低下する前提条件が見当たらない。長期金利のマイナス0.3%はさすがにオーバーショートであったことは市場参加者も認識していると思われる。
黒田総裁は直ちに長短金利の操作目標を変えることはないとの認識を示したそうだが、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の背景には、低下し過ぎた金利の調整(イールドカーブのフラット化)があったわけであり、外部環境に大きな変化でもない限り、金融機関から批判も強まった長短金利の深掘りはむしろ避けたいはずである。黒田総裁は「超長期の金利がもう少し上がってもおかしくない」と語ったようで、これがある意味本音部分であると思われる。
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編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2016年10月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。