女心と秋の空とは申しますが、マーケットの心も移ろいやすいものです。
米大統領選挙の開票中にダウが800ドルも急落した通り、時間外取引では阿鼻叫喚の様相を呈した米株相場、一転して9日は1%超の上昇を遂げダウは過去最高値近くを視野に入れて取引を終えました。BREXITの学習効果でしょうか。ダウは18,589.69ドル(+256.95)、S&P500は2,163.26(+23.70、1.11%高)、ナスダックは5251.07(+57.68、1.11%高)で引けました。
S&P500のセクター別動向は、以下の通り。明らかにリスク・オン、トランプ恩恵銘柄が上昇を牽引しています。
1位 金融 4.07%高
2位 ヘルスケア 3.43%高
3位 産業財 2.46%高
4位 素材 2.13%高
5位 エネルギー 1.52%高
6位 通信 0.87%高
7位 裁量消費財 0.18%高
8位 IT 0.24%安
9位 裁量消費財 1.33%安
10位 不動産 2.28%安
11位 公益 3.68%安
マーケットがトランプ米大統領の誕生お祝いムードに180度切り返した背景は、ズバリ勝利宣言です。
トランプ候補はクリントン候補が電話で敗北を認めたと伝えた一方、討論会当時のような過激な物言いを封印し、紳士的な態度を打ち出しましたよね。同氏を支持しなかった者に対しても「少ないだろうけどね」と軽口を叩きつつ、米国を導くため「助言と支援」を求める姿勢も忘れません。何より二極化が進む米国での「団結」を訴え、共和党寄りであるフォックス・ニュースのコメンテーター勢すら驚かせていました。
ウォール街のエコノミストをはじめ、市場関係者は「意外にも対立を煽ることなく、安心感を与えた」と評価しています。こうした認識は米株相場にも現れ、8日の開票時点とは逆に歓迎ムードに包まれたといっても過言ではないでしょう(トランプ候補の勝利に賭けていなかった筆者には耳が痛い話です)。
共和党が上下院を制し“ねじれ”が解消されたことも、心強い。市場では、就任100日のハネムーン期にインフラ投資や法人税減税を含む税制改革で布石を打つ期待も高まりつつあります。国内政治を優先するとみられ、JPモルガンのグローバル・チーフ・エコノミストのブルース・カスマン氏がメキシコ国境間の壁建設や対中貿易関税などに対し「噛みつくより吠える程度で矛を収めるのではないか」と指摘したように、まずは牽制で終わる可能性も捨てきれません。
しかし、一般投票ではクリントン候補が勝利していたため諦めきれない方々も少なくないというのが実情です。マンハッタンのメイシーズ周辺では、反トランプ候補がデモを展開しました。
トランプ候補が敗北していたも、同じような風景が見られたのでしょうか。しかしながら、こちらをご覧頂くと過去の米大統領選より民主党支持者は実際に選挙に赴いていませんでした。
選挙権の行使がいかに重要か、思い知らされます。
(カバー写真:My Big Apple NY)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年11月10日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。