豊洲市場に「ゼロリスク」を求め続けるとどうなる?

音喜多 駿

こんにちは、おときた駿@ブロガー都議会議員(北区選出)です。

昨日は築地・豊洲市場問題も質疑対象となる公営企業会計決算特別委員会の総括質疑が行われました。

予想通り、各会派の質疑は盛土問題や地下水管理システムに集中する中、私は完全に逆張りをして築地市場の安全面・衛生面について質疑を行い、完全に周囲から浮きまして…

さらには、なぜか私を一方的に敵視(?)している業界紙から「0点」という評価をいただいたので、むしろ光栄な気分です^^

残念ながら世の中に「ゼロリスク(絶対的な安心安全)」というものが存在しない中、豊洲市場の安全性をとことんまで追及しようとするのであれば、現存の築地市場の安全性との比較衡量は避けて通ることはできないはずです。

そもそもこの移転問題は、築地市場の老朽化に伴う安全面・衛生面への不安からスタートしたこともあり、そうした観点から

●築地市場内における交通事故発生状況
●環境基準値以上の汚染物質が検出されている濾過海水
●いまだに市場内に残置されているアスベスト

の主に3点について確認をさせていただきました。順を追って簡単に説明しておきます。

築地市場内における交通事故発生状況

現在の築地市場内は小型ターレトラックと大型トラックの動線が混在しており、さらにそこに観光客などの歩行者が悠然と混ざるという、一般常識からは考えられない混沌とした交通環境になっています。

その結果、毎年発生する交通事故は300件を優に超えて、多数の人身事故まで引き起こされている状態です。

昨日の質疑で確認したところ、平成27年度は物損事故263件・人身事故は109件の合計372件でした。

現場の努力でなんとかあの交通動線を維持して運営していることには頭が下がりますが、構造上の問題や狭隘化から、これ以上事故発生件数を減らすことは物理的に不可能です。

その点、豊洲新市場では構造上、ターレと大型トラック、またはターレと観光客などの歩行者が同じ動線を使うことはなくなりますから、交通事故発生件数は著しく減少し、安全面が強化されることが期待されます。

環境基準値以上の汚染物質が検出されている濾過海水

築地市場内では場内洗浄や活魚用水に使用されている濾過海水から、平成27年に発がん性物質である「トリハロメタン」が環境基準値を超えるレベルで検出されています。

また、こちらは私の独自調査になりますが、同じく環境基準を3.7倍も上回る鉛が検出されたことは、以前にご報告した通りです。

参考:豊洲新市場(地下たまり水)と築地市場(濾過海水)、独自調査では双方から環境基準値を超える汚染物質が検出も…?
http://otokitashun.com/blog/daily/13032/

問題になっている豊洲市場の地下水は、単に排出されるだけで人に触れる可能性は限りなくゼロですが、濾過海水は前述のように築地市場内で実際に使われています。

ただこの事実をもって、濾過海水や築地市場そのものの危険性を指摘したとすれば、

「飲むわけでもないのに、大げさな!」
「そんなことで騒ぎ立てるなんて、築地市場に対する冒涜だ!」

と怒られるのがオチでしょう。

つまり、「そういうこと」なんです

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なお海水を濾過する浄化装置は築55年が経過しており、完全に環境基準値以下に汚染物質を浄化するためには改修が必要不可欠ですが、

・非常に大規模な施設であり、改修中の代替地の確保ができない
・市場内に張り巡らされている配管の改修も必要になり、営業しながらの作業は不可能

との答弁もありました。

いま現在、一部のマスコミや人々が豊洲新市場にもとめている環境基準を他の市場にも当てはめれば、築地市場はおろか現存するすべての生鮮食品市場が営業不能になる可能性すらあります

いまだに市場内に残置されているアスベスト

飛散すれば健康被害に直結するアスベストが、築82年の築地市場内には残置されており、毎年その対策予算が計上されています。

残っているアスベストは、

・密閉された場所にある
・状態が安定している(?!)

のどちらかであるため「大気中に飛散する恐れが低い」として、年4回の濃度測定でその状態をつど確認しているような状況です。

決してなんらかの「封じ込め」が完全に成功している状態ではなく、いつ何が起こるかわからないという点については、環境基準値前後の汚染物質を心配するよりも遥かに現実的な問題と言えるでしょう。

もちろん都も、できる限りの部分のアスベストは除去しており、現在残っているアスベストを取り除くためには大規模工事が必要となり、市場業務を継続しながら行うことは不可能です。

食の安心安全、市場で働く人の安心安全を求めていくのであれば、果たしてリスクとして捉えるべきは一体なんなのか。

こうした点からも、冷静に考えていく必要があるのではないでしょうか。

さてここまでは、築地市場の安全面・衛生面を確認してきました。

それでは仮に、強硬な移転反対派の方々が主張されるよう豊洲市場への移転が「白紙撤回」された場合、経済面では都民負担はどの程度発生するのでしょうか?

結論からいうと、莫大なレベルで発生すると考えられます。

築地市場などを運営する中央卸売市場は公営企業であり、独立採算制となっています。その範囲内で移転費用は賄われるため、豊洲移転に際して都民負担はないとされています。

参考:費用とスケジュールは?
http://www.shijou.metro.tokyo.jp/toyosu/faq/05/

ただしこれはあくまで築地移転が完了し、以前は5000億円とも試算されていた築地市場跡地の売却益が発生することが前提です。

すでに5,884億円が投じられている豊洲市場の整備は、一義的には中央卸売市場が「企業債」を発行して賄います。

ですが独立採算でギリギリ黒字を維持しているとはいえ、年間数億円程度の営業益しかあがっていない中央卸売市場が、数千億規模の企業債を築地市場跡地の売却益なしに償還していくことは絶対不可能です。

「豊洲市場を物流倉庫(or漫画喫茶、駐車場etc)に…」

などという説は検証するのもアレなレベルで、他用途で使用するにせよ売却するにせよ整備費用に比べて微々たる収益にしかなりませんから、一般財源=都民の税金からの補填が行われることはほぼ確実と言えます。

もちろん一般財源に影響を及ぼすからといって、都税が上がるなどの形で都民の皆さまを負担が直撃するとは限りません。

ですが、数百億・数千億あれば待機児童問題や教育費補助など、都政に山積する様々な問題が解決できるはずです。

「ゼロリスク」を求めた結果、どのようなことが起きえるのかについても、このあたりで認識しておく必要があるのではないでしょうか。

最後に念のため申し上げますと、専門家会議などで豊洲市場の安全性を確認していくことは非常に重要であり、この開場延期期間中に徹底的に行うことに異論はありません。

その過程で決定的な安全性の欠如が発見されれば、豊洲移転が見直されることはやむを得ないと思います。

ですが、現在出てきているあらゆるデータや事象を見ても、危険性を証明できるレベルでは到底ありません

ここまで検証してきたように、現存の市場と比べてみればむしろ圧倒的に安全と判断できるくらいです。

一方で以前からの繰り返しになりますが、豊洲市場においては意思決定過程などに瑕疵があり、情報ガバナンスに重大な欠陥があったことは明らかですし、今後も徹底した追及と検証が必要です。

情報ガバナンスの問題と、安全面の問題はきちんと切り分けて考えていく必要があります。

引き続き、専門家会議などの議論が科学的見地から冷静に行われ、過剰な風評被害が収まっていくことを望むものです。

それでは、また明日。

※オマケ※

以下に今日の質疑内容全文を掲載しておきます。

前半パートはおなじみ「シルバーパス」についても質問しておりまして、築地・豊洲市場関連が出てくるのは後半です。

↓↓

Q1
私からはまず、シルバーパスについてお伺いいたします。世界でも類を見ないスピードで超高齢化が進むこれからの東京都において、社会保障制度を徐々に適正化していく必要があることは論をまちません。

都はシルバーパス運営のため、バス協会を通じて交通事業者に平成27年度は171億円以上の補助金を交付しており、高齢化の進展に伴いさらなる経費の増加が見込まれています。高齢者の健康増進や外出促進、それに伴う経済効果などがあるとされておりますが、依然としてそれを裏付ける確かな研究結果は存在しません。このシルバーパスについて私は、すぐさまの廃止や見直しを提言しているわけではありませんが、その費用対効果はどうなのか、支出として適正なものになっているかについては、技術を用いて精査を始めるべきと考えます。時間も限られているため、結論から言えば、名古屋市のようにシルバーパスを電子化・IC化して利用実態を把握し、実績に基づく仕組みを構築していくことで、合理的で効率的な補助金の執行が可能になります。

この制度自体については福祉保健局の所管になりますが、オペレーションの面から交通事業者である交通局に何点か確認をさせていただきます。

まず、交通局が所管する都営地下鉄でもシルバーパスを使用することができますが、これに伴い一般会計から補填を受けています。平成27年度決算において、都営地下鉄が受けた運賃補助金がいくらだったのかをお伺いいたします。

A1:
41億5百万円である。

Q2
多額の補填を受けており、シルバーパス事業を担う一角であることがわかります。ではその補助金の算出方法はどうなっているのかを教えてください。

A2:大都市交通センサスの際に調査した乗車人員80,571人に、定期代単価9,170円、往復利用するものとして1/2、年額とするために12、消費税及び地方消費税を控除するために100/108を乗じて算定している。

Q3
大規模交通センサスの調査データに基づいて算出されている金額であるとのご答弁でしたが、冒頭に述べた通り、現在の技術ならばシルバーパスをICカード化することで、より正確な乗車実績を図り、過不足のない補助金交付を行うことができます。

さらにICカードの中に乗車データを蓄積し、将来的には医療データなどと組み合わせることができれば、シルバーパスが高齢者の健康増進に効果があるのかを測定することや、行動パターンから経済効果の推定が可能になるなど、そのポテンシャルは計り知れないものと言えます。

福祉保健局はシルバーパスのIC化に対して、高齢者ユーザーの利便性や技術的な懸念などから難色を示しておりますが、ICカード乗車券システムの運用を行っている事業者である交通局に、このシルバーパス電子化の技術的な可能性についての所見をお伺いいたします。

A3:
ICカード化する場合、制度設計を受けて、PASMO協議会が技術的な可能性を判断することとなる。
なお、ICカード化にあたり、カードの発行・交付、運賃精算システム、自動改札機等のプログラム改修など多くの課題が想定され、調整が必要となる。

いくつかの課題をあげていただいたわけですけども、やはりそのほとんどがシステムに関連することで、もはや技術的には解決可能なことばかりであると思います。特に無料ICカードについてはすでに都営地下鉄でも障害者対応で実績があり、データの蓄積に対しては新たなシステム構築が必要にはなるものの、シルバーパスのICカード化についても前述のように、今年から名古屋市で実装が始まっています。

繰り返しになりますが、ICカード化で高齢者の乗車記録をデータ蓄積することは、医療や見守り介護など様々な分野に応用可能であり、合理化という観点に加えてさらなる効果を生み出すことが期待されます。技術の発達や情報化社会の進展に伴い、IC化への流れを止めることができないのはほとんど確実ですから、シルバーパスのIC化が一刻も早く進むよう都に要望いたしまして、次の質問にうつります。

Q3
次に、中央卸売市場会計についてです。豊洲市場への移転に関連して様々な課題が山積している中ではありますが、私は本日あえて、築地市場の現状にフォーカスして質問をさせていただきたいと思います。豊洲市場の安全性を問題視する声が大きい昨今ですが、そもそもこの移転議論に、築地市場の老朽化に伴う安全面・衛生面の著しい懸念が根底にあることを忘れてはなりません。残念ながら何事にもゼロリスクというものが存在しない以上、食の安全を考える上で現状の市場と冷静な比較を行い、より良い選択ができるような分析を行っていくべきと考えます。

そこでまず、築地市場内の交通環境についてお伺いいたします。築地市場に行かれたことのある方であれば誰しも御存知の通り、築地市場内は手狭な交通動線をターレトラック、大型トラック、そして市場関係者や観光客などの歩行者が混在して利用しており、常識では考えづらい運用が行われているのが実情です。こうした環境の中でもできるかぎり安全な運営がなされているのは、まさしく現場の努力の賜である反面、毎年数百件規模の交通事故が発生している現実から目を背けるわけにはいきません。

築地市場における平成27年度の交通事故発生件数および、そのうち物件事故と人身事故の内訳について教えてください。

A3
〇築地市場において発生した、平成27年度の交通事故総件数は、372件である。
○その内訳は、車両同士の接触などによる物件事故が263件、また車両と人の接触などによる人身事故は109件となっている。

Q4
大変残念ながら、400件に迫る交通事故があの敷地内で発生しています。過去のデータを見ても毎年300件以上の交通事故が発生しており、休場日も考えれば毎日一件以上の事故が発生している計算になります。

では次にこの交通事故のうち、市場業務の中で主要な業務車両であるターレットトラックにかかわる事故件数は何件かを伺います。

A4
〇ターレットが関わった交通事故の発生件数は、186件となっている。

(おときた意見)
交通事故のうち約半数が、やはりターレに関わる事故なわけです。そしてターレ事故の中には、統計こそないものの、豊洲市場であれば基本的に並走することのないトラックや自転車などの場内走行車両との事故や、また見学者や一般来場者との接触事故が数多く発生していると聞いています。

都や市場関係者も交通事故を減らすために最大限の努力を行っていると思いますが、今の築地市場の構造上の問題や、狭隘化の状況を考えると改善には限界があることは明白です。

豊洲市場では少なくともターレとトラック、ターレと見学者などの歩行者といった事故は確実に少なくなっていくわけですから、こうした観点からも豊洲市場への移転にメリットがあり、安全面からも極めて重要であることを確認しておきたいと思いま

Q5
次に、豊洲市場では使用用途の一切ない地下水から、飲料水の環境基準値を上回る汚染物質が検出されたことが安全性の観点から問題視されている点に関連して、築地市場において洗浄や活魚用水に用いられている濾過海水の実情について確認します。

これからの質問に入る前に念のため、今後の質疑は築地市場の危険性を指摘・流布する意図で行うものではまったくなく、むしろ豊洲・築地両者の安全性を強調しながらも、冷静な比較を行うためであることを、予め申し上げておきます。

築地市場内で実際に使われている濾過海水について、直近の平成27年度に発がん性物質であるトリハロメタンが環境基準値を超えるレベルで検出されたことが、一部報道で指摘されました。また、私が独自に行った水質調査におきましても、濾過後の海水から環境基準値の3.7倍もの鉛が検出されています。

後者の鉛については、規格に乗っ取り専門業者に依頼したとはいえ私個人の調査であり、参考データに過ぎないと思いますが、前者のトリハロメタンについては市場が公的に行った調査で検出されたデータです。この検出結果について、都はどのような認識をもたれているか、見解を伺います。

A5
〇築地市場のろ過海水は、隅田川より取水した河川水を、沈殿、ろ過した後、殺菌し、「市場内洗浄用水」及び「活魚用水」として供給されている。
○この状況を確認するため、毎月、一般細菌など10項目について水質試験を実施している。
○なお、年1回、49項目にわたる水質試験を行っており、その中で総トリハロメタンは、平成27年8月の試験結果においては、0.16㎎/ℓであった。これは、海水温が高くなる夏場に、大腸菌の繁殖を抑えるため、殺菌用の塩素を増やした結果によるものと認識している。なお、直近の平成28年8月の試験では0.061㎎/ℓであった。

Q6
この一連の答弁において重要なことは、環境基準値を上回る物質が検出されることは、現在の築地市場においてもままありえるということです。ですが、この濾過海水は市場内で使用されているとはいえ、飲料水ではないですから、排出基準さえ満たしていれば問題ありませんし、次年度の検査では基準値以内に収まっています。こうした事実に鑑みれば、飲料水どころか、人に触れる可能性すらない豊洲市場の地下水に環境基準を当てはめて危険性を論じることにどこまでの妥当性があるのか、データや用途から冷静に考える必要があるのではないでしょうか。

それでもなお、実際に環境基準値以下の水準を濾過海水に求めるとすれば、築地市場内にある濾過海水施設の改修を行うことが必要になります。私も実際に見せていただきましたが、老朽化が著しく進んだ設備の刷新は、かなり困難ではないかとの印象を強く持っています。実際にこの改修工事は可能なのでしょうか、伺います。

A6
○ろ過海水の設備は、ろ過設備と場内に張り巡らされた配管等である。
〇この設備は、設置から55年が経過しており、これまで補修等により維持保全を行ってきた。
〇ろ過海水の設備を更新するには、狭隘な場内に代替え設備の確保が難しく、さらに、売場への多くの配管更新を必要とする大規模な工事となるため、市場業者の営業に重大な支障を与えると認識している。

(おときた意見)
ローリングする用地に加えて配管の問題となれば、素人目にも専門的見地からも、改修は不可能であると考えるのが妥当だと思われます。このように水に関連する一事をとっても、環境基準値以下を厳密に生鮮食品市場に求めるとすれば、豊洲市場はおろか現存する築地市場を始めとして、あらゆる市場が不適格となってしまう可能性があります。現状とのデータ比較の観点から冷静な判断がなされることを期待しまして、次の質問に移ります。

Q7
次は、アスベストについてです。築82年の築地市場内には残念ながらアスベストが残置されており、その対策費用についても毎年一定の金額が計上されています。このアスベストへのこれまで行ってきた対応と現状について伺います。

A7
〇築地市場では、都の対応方針に基づき、室内外に露出している吹き付けアスベスト等を、市場関係業者の協力を得ながら、これまで除去してきた。
〇現在場内に残されたアスベストは、状態が安定しているものや密閉されたもので、空気中に飛散する危険性が低いと認識している。
○築地市場内では、濃度測定を年4回実施し、飛散していないことを確認している。

Q8
一部ではアスベスト問題はすでに解決済みであるかに言われておりますが、危険性が低い状態かつ年4回の観測をしっかりと実施しているものの、いつ何が起きてもおかしくない状態でアスベストが残っているわけです。環境基準値前後の汚染物質よりもはるかに健康被害に直結するリスクは高いこれらのアスベストについて、端的に現在の技術で完全に除去することはできないのかを伺います。

A8
〇アスベスト撤去工事は、飛散防止のための適切な養生が必要であり、大規模な工事にならざるを得ない。
〇大規模な工事は、売場の分断や、通路の閉鎖など市場の営業に重大な支障を与える。また、狭隘な場内に代替え売場施設を確保することも困難である。
○市場業務を継続しながら工事を実施することは事実上不可能である。

(おときた意見)
やはりアスベストに関しても、狭隘化した築地市場内では抜本的な解決が難しい状態になっており、私も多くの専門家に意見を伺い現地も視察しましたが、市場業務を継続しながら解決することは不可能という結論は一致しています。築地市場に残るということは、常にこの危険性と隣り合わせにいるという点についてもまた、リスク管理をする上で改めて認識を持つことが必要であると考えます。

Q9
ここまで築地市場における安全面からの確認を縷々行ってまいりました。食の安心安全、そして築地市場で働く関係者の安心安全を考えて計画されてきた豊洲市場移転でありますが、すでに5,884億円の整備費用が投じられており、仮に移転が行われなかった場合の経済的負担がどうなるのかという点についても、判断材料の一つとして考えておく必要があります。中央卸売市場は公営企業会計だから、都民負担が生じることはないと説明されているものの、はたして豊洲市場への移転ができなかった場合はどのような事態が想定されるのでしょうか。

そこでまず平成27年度決算において、市場会計の収支はどのような結果だったのかを確認します。

A9
〇平成27年度決算において、営業収益と営業外収益の合計は約180億7,832万円、営業費用と営業外費用の合計は約173億8,865万円であり、その差し引きである経常利益は、約6億8,967万円である。

Q10
平成27年から前から経年変化を見ても、経常収支は平成12年度からこれまでかろうじて黒字で推移しているものの、発生する経常利益は多くて数億円程度であり、5,884億円の豊洲市場整備費用を賄うほどの積立原資がないことは明らかです。

それでは豊洲市場の整備費用の財源は現状、どのように賄う計画になっているのかを伺います。

A10
○豊洲市場の整備費用については、公営企業会計である中央卸売市場会計において支出することになるが、その際には、国庫交付金等の外部資金を積極的に確保するとともに、財政負担の平準化を目的とした企業債の計画的な活用、さらには、築地市場の跡地処分収入も見込んで対応していく。

(おときた意見)
答弁にあった国庫交付金は数百億円程度の見込みであり、企業債の発行が主な対策になることが考えられます。ところが先述の通り、市場会計の経常利益は毎年数億円程度となっており、数千億円の企業債を償還していくことは、築地市場の跡地処分収入がなければ現実的には不可能であると断言できます。つまり、豊洲市場への移転がなされなかった場合、市場会計では受け止めることが到底できず、新たな都民負担が莫大に発生する可能性は否定できないどころか、ほとんど確実です。この点も明確にして、都民や市場関係者の判断材料の一つにしていただく必要があります。

豊洲市場の建設については、意思決定過程に不透明な点があるなど、情報ガバナンスに重大な欠陥があったことは明らかです。それでも安全性の問題と、情報ガバナンスの問題は冷静に切り分けて議論を進めていかなければなりません。前者の安全性の問題については今回の質疑を通じて、ゼロリスクが存在しない中で築地市場との比較も考慮し、過剰な安全神話を求めることがないように問題提起をいたしました。そして、最後に述べた財政面の現実、こちらも踏まえて、今後も科学的知見に基づいた冷静な移転議論が進んでいくことを強く期待いたしまして、私の質問を終わります。

おときた駿 プロフィール
東京都議会議員(北区選出)/北区出身 33歳
1983年生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループで7年間のビジネス経験を経て、現在東京都議会議員一期目。ネットを中心に積極的な情報発信を行い、日本初のブロガー議員として活動中。

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