【映画評】ブルゴーニュで会いましょう

フランス・ブルゴーニュ地方のワイナリーで生まれ育ったシャルリは、20歳のときにブルゴーニュを離れ、パリでワイン評論家になっていた。だがある日、実家のワイナリーが倒産の危機に瀕していることを知る。シャルリは急きょ帰郷し、ワイナリーを再建することを決意するが、長い間疎遠になっていた父親との溝が埋まらずに、衝突を繰り返してしまう…。

ブルゴーニュ地方を舞台に、一度は家を出た息子が頑固な父と衝突しながらも絆を深め、老舗ワイナリーを再建するヒューマン・ドラマ「ブルゴーニュで会いましょう」。ブルゴーニュでは大切なことが2つあって、ひとつは最高のワインを作ること、もうひとつはそれを子どもに伝えることだという。つまりワイン作りというものは、家族で行うものという意味だろう。シャルリは、パリで著名なワイン評論家として活躍している。だがテイスティングは一流でもワイン作りは素人。いくら実家が老舗ワイナリーでも、そう簡単にいくのだろうか?!との疑問が頭をよぎる。しかも、頑固おやじは、好き勝手ばかりやっていて、これではワイナリーが傾くのもやむを得ない。主人公シャルリの恋愛模様も何だか身勝手な気がするし、肝心のワイン作りとその成功への道も、運任せの部分が大きい。そんなわけで、キャラクターもストーリーも、どうにも共感する部分が少ない物語なのだが、それを補うのが、ワイン作りへのハンパないこだわりだ。さらに、ブルゴーニュ地方の神々しいほどに美しい葡萄畑の風景を見ていると、ワイン作りの奥義というのは、知識や技術、伝統だけでなく、偶然や運といった不確定要素こそが決め手なのだと思えてくる。対立していた父と子の和解に、傾いた家業の再建。物語に新鮮味はないのだが、全編を世界的なワイン産地フランス・ブルゴーニュ地方でロケしたという映像が素晴らしく、本作の最大の魅力になっている。
【50点】
(原題「FIRST GROWTH」)
(フランス/ジェローム・ル・メール監督/ジェラール・ランヴァン、ジャリル・レスペール、アリス・タグリオーニ、他)
(ワイン好きにおすすめ度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年11月22日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式サイトより)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。