反日政治では韓国を養えない

中村 仁
朴槿恵辞任会見

韓国大統領府公式サイトより(編集部)

大統領の器ではなかった朴氏

韓国の朴大統領が弾劾訴追を受けることになりました。本来なら日米韓の結束をアジアにおける安定の軸にしなければなりません。混乱の長期化は両隣りの国を喜ばせるだけです。反日を軸に国家運営などしても、経済は発展しないし、アジア外交もうまくいかないということに目覚めてほしいですね。

どうして朴槿恵氏のような人物を大統領に選んでしまったのか。およそ大統領が務まる器でなかったのに、大統領だった父親も、さらに母親も暗殺の凶弾で亡くしたことへ政治的な同情が集まったのでしょう。朴氏の代名詞となった「クリーン、ストイック」というだけでは、大統領は務まらないし、その代名詞も今回の事件、疑惑で裏切られることになりました。

朴氏が11月3日に発表した国民向け談話のニュースを見ていて、「こんな感覚で大統領をやっていたのか。これではまるで少女の感覚だ」と、思いました。兄弟も遠ざけており、「一人で生きていて、個人的なことを助けてくれる人もなく、長い縁があったチョン・ホソン氏から助けてもらうようになった」と、告白しました。

釈明というより身の上話

さらに「私がいちばん、苦しかった頃、横にいて守ってくれたので、私自身が警戒の壁を下げてしまった」と、語りました。一般の人なら、こうした発言は釈明につながるでしょう。語った本人が大統領となると、そうはいきません。政治生命を絶たれる断崖に追いつめられた時に語るには、正直すぎるし、海千山千の政治・外交の世界を渡り歩くしたたかさ、狡さが感じられません。そう告白すれば、国民は許してくれると、きっと思い込んだのかもしれません。

チョン・ホソンを側近扱いして、大統領演説の草稿や機密文書を見せたり、渡したりするくらいなら、大統領府の顧問とかの肩書を与える知恵はなかったのでしょうか。そうしておけば、職務上の相談、助言となりますから、犯罪にならなかった部分もあったでしょう。チョンの財団への寄金についても、財閥のトップに自分が直接、電話して依頼したようです。後に明るみになったら事件に発展しかねないリスクがあるとの認識はなかったのですね。要するに政治的素人です。

朴氏の政治手法は「不通」と呼ばれ、政府部内でも意思疎通を欠いていた(朝日新聞、10日)そうです。政権内部に相談する人も助言してくれる人も少なく、古くからの友人を信頼していたからこうなったのでしょうか。大統領以前、政治以前ですね。このような人物を大統領に押し上げてしまった責任は国民にもあります。

経済の好転を最優先に

次期大統領選となったら、韓国民はどのような選択をするか。再び、反日政策で国民の不満を吸収し、政権を維持しようとするのか。反日では経済は発展せず、米日韓の軸を固めないと、中国や北朝鮮に外交的に対抗できないことは分かってはいるはずです。朴氏の反日政策には米国も手を焼きました。オバマ米大統領との会談で、「北東アジアの平和のために、日本は正しい歴史認識を持たねばならない」と、発言しました。とにかく頑な反日主義でした。

「加害者と被害者という歴史的な立場は、1000年の歴史が流れても変わることがない」が、朴氏の持論だったとされます。次の大統領のもとで、慰安婦問題をめぐる日韓合意が撤回されることがあってはなりません。韓国は産業の中核である財閥の構造改革、深刻な経済停滞、所得格差の拡大などに直面しています。反日で国内を盛り上げるより、経済政策を最優先すべきですね。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2016年12月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。