市場では12月13、14日のFOMCを注目しているが、19、20日の日銀の金融政策決定会合にはさほど関心がないようである。
12月8日のECB理事会では予定通り、資産買入プログラムの延長を行った。その結果は妥協の産物ともいえる600億ユーロに減額しての9か月延長となった。これは少なくとも時間稼ぎのために延長せざるを得ない、ただし、ドイツなどは延長ならば減額をとの主張となり、結果としての妥協案が賛成多数で決定された。
13、14日のFOMCでは昨年12月の利上げ決定時のように全会一致に近いかたちで0.25%の利上げを決定してくると予想される。毎年12月恒例の利上げみたいなかたちとなってしまうが、今後は利上げペースを少し速める可能性もある。
これに対して日銀の金融政策決定会合に関しては、市場の注目度がそれほど高くはない。日銀は動かないであろうとの予想がこの背景にある。
日銀の金融政策はアベノミクスと歩調を合わせるため、2013年4月の量的・質的緩和でかなり無理矢理な政策を実施することを強いられた。当初はうまくいっているかにも見えたが、量で物価を動かすことには所詮、無理があった。それを2014年10月の量的・質的緩和の拡大でさらに政策を深入りさせてしまった。
それでも物価が動かない。しかし買い入れる国債の量には限界あり、昨年12月に補完措置で買入枠の拡大を図る。ところが買入の増額は行わず、今年1月にはマイナス金利政策という手段を講じた。しかし、マイナス金利政策は金融機関からの非難を浴びることとなり、深掘りはもってのほかとなり、長い金利の回復を意識した長短金利操作付き量的・質的緩和という、もはやすべての政策を継ぎ接ぎしたものを打ち出してきた。しかも本来、操作はできないという前提の長期金利操作を加えるという手段を加えてきたのである。
現状はトランプ相場に助けられ、日銀が本来目指していたとも思われる円安株高が生じた。原油価格についても底を打った格好となった。国債の買い入れ額については、すでに80兆円は厳格な目標となっておらず、このままのペースでもステルス・テーパリングという格好となる。しかし、そんなことは表だっては言えないのも現在の日銀であり、相場の地合が変わっても前向きの姿勢は維持しなければならない。ただし、何もしないでも日米の長期金利の格差は拡大し、それは円安の動きをさらに促すことにはなる。
このまま日本の物価も前年比マイナスからプラスに転じることになれば、少なくともこれ以上の金融緩和は実質的に困難になっている日銀にとって、何をしなくても済む環境となる。そうしたなかで、今後少しずつでも日銀は金融政策の縺れを解いていけるのかも課題となろう。市場はすでに過剰な金融緩和に期待するようなこともなくなっている。それが効果より副作用をもたらしかねないことにも気が付きつつあるためであろう。
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編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2016年12月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。