民主党支持者や無党派にとって、トランプ氏の最優先課題は「雇用維持」

安田 佐和子

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米株が過去最高値が次々に更新し、トランプ・ユーフォリアはとどまるところを知りません。

ウィスコンシン州では再集計が10日で幕を閉じ、131票分少なくなったとはいえトランプ氏の勝利を確定したものです。緑の党のジル・スタイン候補が牽引した他の2州、ペンシルベニア州とミシガン州では裁判所で阻止されあえなくゲームオーバーとなりました。少なくともペンシルベニア州では再集計に反対する訴訟が6件に及んだといい、トランプ次期大統領の就任を待ちます。

米12月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値が2015年1月以来の水準へ上振れした通り、米大統領選後の反トランプの気運はどこへやら。空調大手キャリアのメキシコ移転を断念させ、ソフトバンクから米国への投資と雇用創出を引き出した辣腕もあり、今では民主党支持者すらトランプ氏の政策に注目しつつあります。

CNBCが全米800人を対象に行った世論調査によると、民主党支持者と無党派の間でトランプ新政権の最優先課題を「雇用確保」と回答した割合が56%と過半数に達しました。共和党の世論調査専門家であるミカ・ロバーツ氏は「アメリカ人はトランプ氏を潜在的に労働者の強い味方とみている」と指摘、空調大手キャリアのメキシコ移転撤回が奏功したと説きます。逆に、共和党支持者で「雇用の維持」と回答したシェアは48%にとどまりました。

普通に考えればキャリアの親会社ユナイテッド・テクノロジーズが政府調達企業であり、あからさまな政治圧力と捉えられますよね。次期副大統領のマイク・ペンス氏がインディアナ州知事だっただけに、色々と憶測も飛び交うのもむべなるかな。おまけにトランプ氏はボーイング製のエアフォース・ワンやロッキード・マーチンが製造するF35戦闘機にも物申す状況ですから、小さな政府に立脚した共和党支持者であれば眉を寄せることでしょう。一方で、民主党支持者や無党派にしてみれば政府調達コストの抑制がインフラ投資や中間層の所得税減税への布石と映るのかもしれません。

民主党支持者や無党派の期待に反し、トランプ氏が大統領に就任した後も企業ごとに国外移転の阻止を図るかは微妙でしょう。こちらをご覧下さい。

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(出所:MultiStates)

2016年7月から開始した2017年度で、ニューヨーク州やカリフォルニア州を含む21州で既に歳入不足に陥っているといいます。年金、医療保険など人口に多い州ほど費用がかさみますからね。インディアナ州が空調大手キャリアに与えた税額控除700万ドルというのはサステナブルとは言えず、大統領就任後もこうしたパフォーマンスが続くとは考えにくいのではないでしょうか。

(カバー写真:M van Andel/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年12月13日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。