河崎環『女子の生き様は顔に出る』が最強すぎた件

常見 陽平
女子の生き様は顔に出る
河崎 環
プレジデント社
2016-11-29

 

河崎環さんのデビュー作の出版記念イベントに登壇。田中俊之先生、おおたとしまささんという豪華なメンツ。私は司会だったのだけど、例によって一番喋ってしまい申し訳なかった。「河崎さんの話をもっと聞きたかったなぁ」と思いつつ、電車に乗ったのだが、そりゃ、私のせいだ。

イベントはいくつかのメディアで記事になるそうなので、ここでは書籍の感想を。そう、レビューはイベント前に、発売直後に書くべきだったのだが、遅れてしまった。ダメ人間である。ただ、最近は生きるのが精一杯で、スケジュール管理などまるで出来ていないのでしょうがない。

結論から言うと、あぁ、スゴイ著者がデビューしたなぁ、という感じ。何がスゴイのか?説明しよう。かっちりしたスキルと、一方でエモな感じ、そらには火中の栗を拾いに行く感じがいちいちスゴイ。

なんせ、河崎さんは文章が上手い。いや、長年ライターとして活躍しているのだから、上手いのは当然なのだが。イベントでも本人に直接お伝えしたが、クラシックピアノを3歳から叩き込まれてその道でもプロで活動していた人がぶっこわれたアヴァンギャルドなジャズをやっているような、あるいはバークリーを出た凄腕ミュージシャンがメタルをやっているような。そんな感じだ。要するに、エモな文体のようで、基礎力がしっかりしているような。しかも、笑える一文にしても絶妙に言葉を選び、詰め込んでいるような。

ブログからデビューする人なんかが増えている中、文章の書き方が分からない人も単著を出せたりする(・・・私だ)。そんな中、彼女は重厚感のあるものから、軽妙なものまでかっちり書ける人であり。しかも、今どき、文体を楽しむことができるのが、いい。そう、本というか、文章を読む楽しみというのは、文体を楽しむという側面もあるわけで。単に情報を得る手段じゃないんだよね、本を読むってことは。

この、もともと重厚な文章を書ける人が、軽妙に書いているのと同様に・・・。彼女はめちゃくちゃ頭がいいのに、客観的で冷静な考察ができる人なのに、絶妙にエモい主張をしている。これがまた、いい。いや、彼女ほどの知性と視点の持ち主なら、問題の真因はお見通しなのだ。それを40代女性視点でエモく吠えているからこそ、共感が得られるのである。

彼女は今どき珍しい、火中の栗を拾いに行く人である(ちなみに、私はそもそも栗が苦手なので、拾いに行かない ケーキもモンブランは基本、頼まない ボールペンはずっとモンブランだが)。「女子と子宮」など実にデリケートなテーマに、女性視点で切り込んでいく。猿人バーゴンを探しに行く川口浩探検隊のような決意、勇気、ドライブ感がいい。


なんというか、昨年、武田砂鉄さんが単著デビューした時のことを思い出した。この『紋切型社会』が出たときの。あっという間に彼は話題をかっさらっていった。河崎環さんのデビュー作は、女性論者界の武田砂鉄誕生というか、女性論者からの回答というか、そんな感じがする。

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・・・河崎さんの話を砂かぶりの場で聞ける機会だったのに。そう、イベントというのは、実は登壇者が一番うれしくて。ずっと登壇者に質問できるわけで。またやらかしてしまった。今日からまた生きるぞ。

空気を読んではいけない
青木 真也
幻冬舎
2016-09-08


年内のイベントはこれで終わり。年始は1月6日(金)の青木真也選手とのイベントから!格闘技、プロレスファン以外もうなる、見事な大放談だぞ。

そして、まだ告知は先だが2月6日(月)は日経電子版の部署の編成部長江村亮一さん、東洋経済オンラインの武政秀明さん、徳力基彦さん、中川淳一郎さんとネットニュース祭だぞ。

来年もイベントは頑張るよ。きてね!


編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2016年12月16日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた常見氏に心より感謝申し上げます。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。