安倍外交に欧州が注目!

長谷川 良

当方は28日早朝、いつものように郵便ポストからオーストリア日刊紙プレッセを取った。プレッセ紙の一面トップをみると、安倍晋三首相が27日、ハワイを訪問し、旧日本軍の真珠湾攻撃による犠牲者へ黙祷を捧げている写真が掲載されていた。オーストリアの代表紙「プレッセ」の一面トップを日本の首相が飾ることはこれまでなかったので、少々驚いた。

▲絵解き 安倍首相の真珠湾訪問の様子を1面トップで報じたオーストリア日刊紙プレッセ12月28日付

▲安倍首相の真珠湾訪問の様子を1面トップで報じたオーストリア日刊紙プレッセ12月28日付

今年は旧日本軍による真珠湾攻撃75年目に当たる。オバマ米大統領は12月7日、特別談話を発表し、「最大の敵国が今日、緊密な同盟国となった」と述べ、真珠湾攻撃から75年の年月が両国関係を激変させたと語っている。
同大統領は27日、安倍首相とともに真珠湾攻撃の犠牲者への追悼式典に臨んだ。

ちなみに、オバマ大統領は5月27日、安倍首相の招きで米大統領として初めて被爆地広島の平和記念公園を訪問し、安倍首相と共に原爆資料館を見学した後、原爆死没者慰霊碑に献花している。
当方は「“凍った時間”を動かすのは誰?」(2016年12月9日)というコラムの中で、「時間は確実に動いている。国家関係、民族関係、個人関係もその時間の経過とともに変わっていく。時間を止めて、その出来事を評価したり、糾弾することは止めるべきだろう。時間を解放し、その役割に委ねるべきではないか。オバマ大統領は真珠湾攻撃の犠牲者を追悼する一方、日本側に謝罪を要求しないことを示唆した。不幸にも時間が凍ってしまった場合、それを溶かすのは歴史家ではなく、やはり政治家の役割だろう」と書いた。

安倍首相の外交は非常に活発だ。首相は今月15日、16日、ロシアの「プーチン大統領を招き、北方領土返還問題から平和条約の締結問題まで話し合ったばかりだ。
1年前の昨年12月28日には、ソウル外務省で旧日本軍の慰安婦問題で岸田文雄外相と尹炳世韓国外相が会談し、慰安婦問題の解決で合意に達した。日韓両政府は、慰安婦問題について不可逆的に解決することを確認するとともに、互いに非難することを控えることで一致した。アベノミクスの成果はもうひとつだが、首相が推し進める未来志向の外交は着実に成果を挙げている。

ところで、なぜ安倍首相は外交に力を入れることができるのか。はっきりとしている点は、安倍政権が長期政権だからだ。政権在位期間で今月6日、中曽根康弘元首相を超えて戦後歴代4位となったばかりだ。安倍首相は国内経済の復興と共に、独自外交を展開できる時間が与えられたわけだ。長期政権でなければ外交は無理だ。任期1年余りの短命政権では外交政策を実行する時間はない。政治家には一定の時間が必要だ。党内や与・野党内の政争に明け暮れているようでは、外交は展開できない。

もちろん、安倍首相の外交力を過小評価する考えは毛頭ない。時間が与えられたとしても独自外交を展開できない政治家が多い中、安倍首相は、過去の問題を清算し、次世代に過去の重荷を与えてはならないという決意で外交に臨んでいるという。幸い、同首相の決意は大多数の日本国民に歓迎されている。

安倍首相の真珠湾訪問を1面トップ写真付きで報じたプレッセ紙は、安倍首相の外交にニュース・バリューがあると判断したのだろう。具体的には、過去の問題を未来志向で積極的に和解に乗り出す安倍外交が評価されたわけだ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2016年12月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。