昨日ご紹介した、小池都知事による「保育士月給2万アップ」に続き、東京都の新待機児童対策が報道されたので、解説いたします。
待機児童対策:保育所家主、資産税免除へ 都が17年度 – 毎日新聞 http://bit.ly/2hY42sV都は直接課税する23区で固定資産税を全額免除し、市町村にも全額を交付金として補填(ほてん)する。免税規模は約30億円を見込んでいる。
待機児童を生み出す「物件の壁」
待機児童問題には、(1)保育士不足の壁(2)自治体の壁(3)物件の壁 が存在していて、今回の施策は、この物件の壁を打ち崩そうというものです。
物件の壁とは、保育所用地や物件が東京23区のような待機児童集中エリアで不足している問題です。ドラえもんの時代だったら、街中に土管のある空き地はたくさんありましたが、今はほとんどそんなんありませんよね。
だから、杉並区に至っては、仕方がないから区立公園の中に保育園つくっちゃおう、と頑張ったら、地域住民に公園潰すなとクレーム入れまくられ炎上する、という事態に陥ったわけです。
(参考:杉並区の保育園反対運動に関する、実務家からの考察 http://bit.ly/1Pwb3xG )
構造的な要因
ここには、構造的な要因があります。用地を持っている物件オーナー(大家さん)としては、保育園に土地や物件を貸しても全然メリットがなかったんです。
特にすごく高い地価を払ってもらえるわけでもない。うっかり住民の反対運動に火がついたら、面倒臭いことになる。既存物件を貸す場合、保育園の規制を満たすために、改修工事をしなくてはいけない等など。
さらに、他にメリットがある競合があります。それがアパートです。アパート(小規模住宅用地が適用)を建てたら、固定資産税が6分の1になるのです。
(出典: 総務省税負担軽減措置関連資料 )
これは高度経済成長に伴う住宅不足を解決するために作られた優遇制度が、住宅供給過剰気味になった現在でも、それで利益を得るステークホルダーの方々との調整もあって撤廃できず、そのまま残り続けている制度です。
「保育所に貸すより、アパート建てた方が良い」
こんな構造があったのです。
固定資産税ゼロの効果
そこで、アパートつくるより、大家さん・物件オーナーにとって得な仕組み、すなわち固定資産税ゼロの施策が導入された、というわけです。
これで、大家さん・物件オーナーさんが「お、それだったら保育園に貸してみようかな。まあ社会貢献にもなるし」と言って、物件提供していただけたら、不足している保育園用地・物件が市場に出回ってくる、ということになります。
最後に
というわけで、今回の小池都知事の打ち手に関しても、高く評価できると思います。固定資産税は都道府県がいじれるものなので、他の待機児童で悩む地域でも波及していくことが望ましいです。
23区の大家さん・物件オーナーさん、保育園に貸したくなってきましたか?そうしたら、全国小規模保育協議会までお問い合わせください。志ある保育園事業者を、ご紹介致します。共に待機児童問題を、過去のものとしましょう!
編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2017年1月6日の投稿を転載させていただきました(アイキャッチ画像は写真ACより)。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。