オバマ大統領、最後の演説と記者会見

松田 公太
オバマ@TIME

写真①(引用:TIME Nov. 17, 2008より)

1月11日(日本時間)にシカゴで行われたオバマ大統領の最後の演説。

感謝の言葉を述べたあとは「Everyday, I learned from you. You made me a  better President, and you made me a better man(私は日々みなさんから学んできました。みなさんが私をより良い大統領、より良い人間にしてくれました)」から始まりました。

そして民主主義の大切さ、多様性に富んだ(移民を含む)社会の大切さ、自由で公平な貿易の大切さ、普通の人々が立ち上がり変化を求めていくことの大切さを語りました(約1時間のうち7割以上を民主主義について割いていました)。

民主主義を守って発展させる為にはより良い教育が必要であるとも訴えています。

トランプ

写真②(引用:2017 Donald Trump Out of Office Countdown Wall Calendarより)

『ちなみにトランプ次期大統領は(米国では笑い話になっていますが)「高い教育の人々でも勝った、低い教育レベルの人々でも勝った。低い教育レベルの奴らは最高だ」とまるで教育を受けない人が自分にとっては都合が良いような発言もしてしまっています』 (2016年6月ネバダ州の党員集会にて)

その翌日に行われた記者会見でトランプ次期大統領は相変わらずの傍若無人ぶりを見せつけ、ツイッターで名指しにした自動車メーカーが米国内で工場や人員の増強をすることをアピールし、「自分は神が創造した最大の雇用創出者となるだろう!」と述べていました。

(短期的に数千人の雇用を作っても長期的には競争力を弱めるため、将来はより多くの雇用を失う可能性が高いのですが・・・因みにオバマ政権では失業率を 6.5%から4%台へ下げ、桁違いな雇用を生んでいます)

また、自身にとってマイナスの報道をしたCNNの質問を拒否し、様々な声に真摯に耳を傾けるタイプではないということを再度露呈したのです。

それに対し、オバマ大統領は昨日の最後の記者会見で、「記者たちは巨大な権力に批判的な目を向けなくてはならない」と報道の自由の大切さを強調しました。

また、

「That’s probably the most useful constructive advice and the most constructive advice that I’ve been able to give him, that if you find yourself isolated because the process breaks down or if you’re only hearing from people who agree with you on everything or if you haven’t created a process that is fact-checking and probing and asking hard questions about policies or promises that you’ve made, that’s when you start making mistakes.

(私から彼に伝えられる最も大切なアドバイスは、プロセスが崩れて孤独になった時や、自分が聞きたいことにしか耳を傾けなくなった時、自分の政策に厳しい目や質問を向けたり証明をする手順を省いたりすれば、それが間違いを起こす始まりになるということだ)」

と様々な意見に耳を傾けることの大切さを最も重要なアドバイスとして発信しています。

最後の演説でも、最後の記者会見でも、自身の理念や考え方、そしてスタンスと正反対のトランプ氏に対して牽制球を投げ続けたのは明らかです。それだけオバマ大統領も(自分の政策がひっくり返されるだけではなく)今後の米国の方向性を危惧しているのだと思います。

それに対しトランプ氏は売られた喧嘩を何倍にも誇張して買う人なので、きっと明日の就任演説ではオバマ前大統領のレガシー(オバマケアやTPP等)を崩す具体的な政策発表も織り込んでくるのではないでしょうか。

私はどこの国でも政権交代後(民主的に行われた)の半年ぐらいは新リーダーを応援/見守るべきだと思っていますので、当分の間は静かにトランプ新大統領のお手並みを拝見といきたいのですが、民主主義や自由市場という普遍的な価値を少しずつ崩していってしまうような可能性を非常に心配しています。

最後に。オバマ大統領が演説の中で発信した言葉

「After eight years as your President, I still believe that.  And it’s not just my belief.  It’s the beating heart of our American idea – our bold experiment in self-government.

It’s the conviction that we are all created equal, endowed by our Creator with certain unalienable rights, among them life, liberty, and the pursuit of happiness.

(8年間大統領を務めた後も、私は確信していることがあります。それは私の信念というだけではありません。アメリカの思想の鼓動でもあります。それは我々の自治政治という大きな試みです。それは、みなが平等に創造されたという確信です。誰もが創造者から生命、自由、幸福を追求するという確かな権利を与えられているのです)」

胸に響きます。そして、やはり自治政治、民主主義の進化系こそが「直接民主型政治」にあると私は今も確信しています。

理想を追い求めたオバマ大統領。

お疲れ様でした。


編集部より:この記事は、タリーズコーヒージャパン創業者、前参議院議員の松田公太氏のオフィシャルブログ 2017年1月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は松田公太オフィシャルブログをご覧ください。