今後は超長期国債の動向に注意、先物に新制度も

イエレン議長は18日の講演で、完全雇用に近づきインフレ率が2%に向かうなか、FRBが緩やかな利上げを実施していくことは理にかなうと述べた。18日に発表された12月の米消費者物価指数は前年比プラス2.1%となり、11月の前年比プラス1.7%から0.4%も上昇し、2%台に乗せていた。FRBの物価目標はPCE価格指数での前年比2.0%ではあるものの、今年中にFRBが複数回の利上げをてくる可能性はある。

いわゆるトランプ・ラリーの象徴ともなった米長期金利はいったん昨年末に2.5%台に上昇したところでいったんピークアウトし、その後2.3%台に低下した。しかし、米長期金利は再び3%に向けて上昇するのではないかと予想される。

米長期金利の上昇とその背景にある物価上昇とFRBの利上げ観測は、円債にも影響を与える。日銀の異次元緩和とは別の要因によって日本の物価も今後上昇してくるとみられ、それが日本の国債の利回りにも影響を与えよう。

日銀は現在、長短金利操作付き量的・質的緩和政策を行っている。これにより日本国債のイールドカーブを操作しようとしている。物価を含めたファンダメンタルの改善はこのイールドカーブの上昇圧力ともなる。長期金利のゼロ%近辺という目標があまりに低い水準という認識が今後強まり、それが超長期債の利回り上昇を促すことも予想される。

日銀は目標とする長期金利水準を微調整として「引き上げる」ことができるのか。超長期債の利回りが跳ね上がった際に、イールドカーブのスティープ化を阻害しかねない超長期債の指し値オペを実施してくるのか、このあたりは不透明感も強い。

いずれにしても今後、超長期債の利回りが更に大きく揺れ動く可能性が出てくる。そうなるとそれをヘッジする手段が求められる。

大阪取引所には国債先物が上場されているが、そのなかに超長期国債の先物がある。2015年7月に制度変更が行われたものの、商いそのものは低迷している。その打開策のひとつとして、面白い制度が今年1月4日からスタートしていた。

すでに40年国債の利回りが1%に接近するなど、金利がマイナスに沈んでいない超長期国債のニーズは国内の投資家などにも当然存在している。このため、超長期国債先物を取引したいという声は強いようで、業者としても流動性が極めて低い現状で、超長期先物について常時気配提示をするのは限界があるが、投資家のニーズがあるというのであれば、気配を出すことは可能となろう。

そこで、取引所が間に入って投資家にニーズがあるときに、そのニーズについて業者に伝えることで、取引を成立させようとの試みである。これは有価証券オプション、いわゆる株式オブションで導入されていたものの国債先物版となり、RFQ(リクエスト・フォー・クオート)メールサービスと呼ばれる。

これは投資家などの取引参加者から超長期国債先物での取引需要がある際に、その限月について大阪取引所にメールでその需要(価格ではなく数量)を伝え、そのリクエストを取引参加者やマーケットメーカーに匿名化したかたちで情報を提供するものとなる。つまり投資家の需要を伝えることで、少しでも板の厚みを増そうとの試みとなる。

債券先物といえば長期国債先物が中心でこちらは流動性が極めて高い。しかし、この長期国債はチーペストと呼ばれる7年ゾーンの国債に連動する。つまり日銀がコントロールしようとしているものに含まれる。そのコントロールが可能なのかということはさておき、それよりも超長期債の方が動きやすい側面がある。その分、投資家だけでなく短期的な取引をする投資家などにも超長期国債先物には潜在的なニーズはある。

超長期国債先物の潜在ニーズがRFQ(リクエスト・フォー・クオート)メールサービスにより具体化し、それがひとつの起爆剤となり、超長期国債先物の流動性が向上することになれば、今後はヘッジ手段としても有効活用が可能となる。実際にはなかなかハードルが高いかもしれないが、今後の相場動向を意識した上で、少しでも超長期国債先物の流動性が向上することを期待したい。

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編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年1月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。