デジタル教科書はユニバーサルデザインが前提

昨年12月に「デジタル教科書で統合教育を」という記事をアゴラに載せた。デジタル教科書の利点はメディア変換の容易さであり、テキストを音声に変えたり、他の言語に翻訳できる。上手に利用すれば、難読症の子供も外国語しかわからない児童も、普通クラスで一緒に学ぶことができる。スウェーデンが研究開発プロジェクトを起こしたが、わが国もその方向に動くのがよい、という要旨である。

その後、ノルウェーがアクセシビリティ対応義務化の範囲に教育も入れる方向、との情報が流れてきた。以前から障害を持つ児童の教育は政策の範囲に入っていた。しかし、近年、デジタル技術が発展したので、関連ウェブサイト・教材・学習管理システムなどについて、アクセシビリティ対応の義務を強化するという。ノルウェーで使用するデジタル教科書は、これからはユニバーサルデザインが前提になるわけだ。

欧州では公共機関が提供するウェブについて、アクセシビリティ対応が義務化されている。欧州議会・評議会が可決し、ウェブでの義務化は2016年10月22日に発効した。ノルウェーは、さらに前に進もうとしている。

デジタル教科書を含め電子書籍は、きちんと対応すれば今までの紙版よりも多くの人が閲覧できるものになる。文字の拡大、地と文字の配色の逆転、読み上げ、翻訳、特定の単語の検索など何でもできる。きちんと対応しないと、『東京防災』のように悲劇的な状況に陥る

わが国では、電子書籍のアクセシビリティ対応にどれほどのニーズがあるのだろうか。対応はどこまで進んでいるのだろうか。技術的な課題はどこにあるのだろか。これらについて研究した成果を、東洋大学出版会から『電子書籍アクセシビリティの研究』というタイトルで昨日1月19日に出版した。今日から書店に並ぶそうだ。紙の書籍だけでなく、アクセシビリティに対応したKindle版も同時に発売した。僕も一章分を執筆した。お読みいただければ幸いです。1月30日には公刊記念シンポジウムも開催します