蓮舫氏が過去記事で稲田氏を追及するブラックジョーク

新田 哲史
蓮舫 稲田

火花を散らした稲田氏と蓮舫氏(首相官邸サイト、民進党サイトより)

産経新聞は面白がって「レン砲炸裂」などとタブロイド紙ばりに報じていたが、蓮舫氏が昨日の予算委員会で、稲田防衛相を所管外の政策で、あからさまに狙い撃ち。男女共同参画を巡って、稲田氏が10年前に雑誌の対談で保守的な家族観を示す発言をしたことをあげつらい、安倍政権の女性活躍推進との齟齬を追及する構えを見せた。

レン砲炸裂! 民進・蓮舫代表、稲田朋美防衛相を執拗に攻撃 民進党内からは「印象良くならない」と疑問も(産経ニュース)

一応、一次情報を少しでも確認しておこうと、国会サイトにアクセスしたが、残念ながら、即日では速記の議事録が国会のサイトにアップされておらず、動画で二人のやりとりを確認した。「女の対決」のあらかたは、上記記事を読んでもらえればわかるが、審議の途中、何度も民進党の議員数名が委員長席に詰め寄って中断もあったほどの小波紋を呼んだ。

蓮舫氏としては、稲田氏がかつて「夫も家事をすべきだと陣頭指揮するのは別の意味で押しつけで、ある種のファシズムだと断定した」という旨の発言をしたことなどを指摘することで、内閣の一員には本音では女性活躍推進に消極的なメンバーがいることを強調するつもりだったのだろう。

見逃していたが、蓮舫氏は昨年の秋にも同様の“手口”を使って、稲田氏と過去記事の矛盾を追及している。

蓮舫代表が稲田朋美防衛相を攻撃 防衛費めぐる発言を「ダブルスタンダード。自分に都合の良い発言を繰り返している」

稲田さんも陣笠議員の時代だったとはいえ、責任ある立場になって、蒸し返されているというのは、自業自得な面もある。しかし、蓮舫氏自身も昨年、二重国籍問題を追及された過程で同じような目に遭ったことを思い返すと、この一連のやりとりがブラックジョークにしか思えない。皆さんも記憶に新しいところだろうが、彼女が政治家になる前の雑誌の取材で「自分の国籍は台湾」などと話した内容が記事に載っていたことをネット民から次々に暴露されて追い詰められていった(参照:拙著「蓮舫VS小池百合子、どうしてこんなに差がついた?」ワニブックス)。

さて、この日の場面で、稲田氏は過去の発言との整合性に対し、「これは10年前の一議員の見解です」と答えている。妥当性があるかどうかは別として、逃げずに対応したのは確かだ。

一方の蓮舫氏は昨年の秋、雑誌記事に対して「編集の過程で『だった』という部分が省かれてしまった」などと不可解な釈明をして、二重国籍の事実を認めた後も、雑誌記事の発言との矛盾についてしっかり答えていない。

稲田大臣もすかさず「蓮舫委員も二重国籍問題の折に過去の記事のご発言を指摘されていましたが、あれはどうだったのですか」とブーメランを投げてやればいいものだが、さすがに脇を固める福山哲郎氏あたりが血相を変えて山本委員長席に飛びかかったりして、委員会の収拾がつかなくなるだろうから、まあ、「大人の対応」を見せ、こらえたといったところか。

相変わらず、去年のことはすっかり抜け落ちていそうな蓮舫氏の舌鋒ぶりを見るにつけ、苦笑を浮かべるしかなかった。こんな“揚げ足取り”芸が国会で繰り広げられている間にも、トランプ政権が次々に発動する異例の措置に世界はカオスの真っ只中。「どうせ選挙用のパフォーマンスだろう」と思っていた在日米軍撤退もこの先、「全くない」と言い切れるかどうか不透明だ。野党第1党の党首なら、安倍総理と丁々発止、大局的な議論をやってもらいたいものだが、こんな国会論議を見せられると、「そりゃ国政よりも千代田区長選のほうが視聴率取るわな」と思うこの頃である。

蓮舫VS小池百合子・書影

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民進党代表選で勝ったものの、党内に禍根を残した蓮舫氏。都知事選で見事な世論マーケティングを駆使した小池氏。「初の女性首相候補」と言われた2人の政治家のケーススタディを起点に、ネット世論がリアルの社会に与えた影響を論じ、ネット選挙とネットメディアの現場視点から、政治と世論、メディアを取り巻く現場と課題について書きおろした。アゴラで好評だった都知事選の歴史を振り返った連載の加筆、増補版も収録した。

アゴラ読者の皆さまが昨今の「政治とメディア」を振り返る参考書になれば幸いです。

2017年1月吉日 新田哲史 拝