数字で見る図書館問題

昨日の記事『国会図書館が「電子図書館」になる日』で、国会図書館による蔵書デジタル化事業の加速を提案した。その裏にある、全国の公共図書館の問題について説明する。なお、この記事で利用する数値は日本図書館協会の「日本の図書館統計」による。

2015年に公共図書館の総数は3261であった。2005年には2951だったので、この間に310館も増加したことになる。蔵書数は総計4億3099万冊で、05年から8614万冊増えている。個人貸し出しの登録者数は5573万人で、これも10年前から870万人の増加。個人貸出総数は6億9048万点に達し、7352万点も増加した。これらの数値は、公共図書館が国民に定着し利用されている様子を表している。ここまでは明るい側面。

蔵書を購入するための支出が資料費である。2015年の場合、図書購入に20億7324万円、雑誌・新聞に3億7347万円、視聴覚資料に1億499億円が投じられ、総額は28億1289億円であった。2005年には総額が34億3127万円だったので、6億1837万円も減額された。図書館平均では05年に1163万円だったものが、15年には861万円と25%以上減額されている。資料費の減額を反映して、新たに追加される購入図書数は、05年の2046万点が15年には1344万点にまで減少した。これも図書館平均を求めると、5922冊が4123冊に減ったことになる。

職員数にも同様の傾向がある。専任・兼任職員、要するに公務員の合計は2015年には11843人であった。2005年には15701人であったから3858人が減少した。この空白は05年統計にはなかった臨時・委託・派遣で埋められ、15年にその総計は27315人に達している。図書館には司書という専門職員がいるが、今は多くが臨時・委託・派遣で賄われている。

資料費の減額も職員構成の変化も、原因は地方公共団体の財政ひっ迫である。地方公共団体は公共図書館の維持に四苦八苦している。それが、指定管理者による管理運営という施策が受け入れられた原因である。日本図書館協会の調べでは、2015年度に新たに指定管理者を導入したのは46館で、15年度までの総計は469館に達している。すでに約15%は指定管理者によって運営されているのである。

今後10年程度を展望しても財政が改善される可能性は低いから、指定管理者化は続くだろうが、一部の公共図書館は存続自体がむずかしくなる。その結果、わが町には図書館がない、という「図書館空白地帯」が生まれる恐れがある。国会図書館からの一般向けに送信ができないと、「図書館空白地帯」は「国会図書館空白地帯」にもなる。

国会図書館がデジタル化した蔵書のうち、一般に送信できるものは現状では五分の一以下である。「図書館空白地帯」が生まれるのに備えて、国会図書館から一般に広く送信できるように著作権制度を改正していくとしたら、今から準備を進める必要がある。