【映画評】ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち

渡 まち子
提供:20世紀フォックス

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周囲になじめず、孤独な少年ジェイクは、唯一の理解者だった祖父が亡くなり途方にくれる。謎めいた死をとげた祖父の遺言に従って小さな島を訪れたジェイクは、異世界への入り口と森の奥に立つ古い屋敷を見つける。そこには、不思議な能力を持った奇妙な子どもたちが、彼らの母親代わりで厳格なミス・ペレグリンと共に暮していた。ひたすら同じ1日を繰り返す彼らの日常に驚くジェイクだったが、空中浮遊する少女エマに恋をする。やがて自分にも備わった特別な力に目覚めたジェイクは、自らの役割を知ることに。だが子どもたちの能力を利用し、世界を支配しようとする邪悪な敵バロンが迫っていた…。

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奇妙な子どもたちが暮らす島を訪れた少年が、世界の危機を救うために冒険を繰り広げる「ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち」。原作はランサム・リグスによるティーン向けファンタジー小説「ハヤブサが守る家」だ。ひと言で表現するならば、ティム・バートン印の「X-MEN」。ただ、異能者たちの悲しみや特殊能力という設定は同じでも、それが幼い子どもたちで、人目を避けて生きるために、70年前の安全な1日を繰り返しているというところが本作の個性であり、哀しみでもある。同じ毎日を生きる単調な平和は、個性的な人間の居場所がない現実世界の生きづらさを表しているのだろう。それでもずっと屋敷に留まるのではなく、敵を迎え討ち、対峙しなければならない時がやってくる。それを教えるのが、自らも特殊な能力を持つことを知った主人公ジェイクなのだ。

初期の頃からバートン監督は、異形のものたちの悲しみを描いてきた。その意味で、本作はいかにもバートンらしいダーク・ファンタジーだ。ノスタルジックな冒険譚にして不思議なラブ・ロマンスだが、宿敵バロンと対峙するクライマックスのバトルから、最終盤にジェイクがたどる冒険までがあまりに駆け足で詰め込みすぎなのが、ちょっと惜しい。だが多様性が危険視される昨今、この奇想天外なファンタジーは不思議なほど現代に響くメッセージがあり、同時代性を帯びている。りりしく美しい“戦うメリー・ポピンズ”ミス・ペレグリンを演じるエヴァ・グリーンが抜群にハマッていた。

提供:20世紀フォックス

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【70点】
(原題「MISS PEREGRINE’S HOME FOR PECULIAR CHILDREN」)
(アメリカ/ティム・バートン監督/エヴァ・グリーン、エイサ・バターフィールド、サミュエル・L・ジャクソン、他)
(ダーク・ファンタジー度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年2月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。