ポテトチップスで知られるカルビーが4月から、オフィス以外で仕事をする「テレワーク」を週2日から制限無しに拡大すると報道されています。テレワークで仕事をすれば、辛い通勤ラッシュ(写真)に巻き込まれることなく仕事ができる環境が整います(写真はウィキペディアから)。
そもそも朝から会社のオフィスに集まって、一緒に仕事をするというのは、過去の労働環境を前提にした名残りです。情報をメールでやり取りでき、クラウドにデータも集められるようになった今では、集まることのメリットより、それにかかるコストやストレスのデメリットの方が大きくなっていると思います。
以前仕事をしていた会社では、月曜日の午前中から部員が集まってミーティングしていましたが、数字の報告が延々と続くだけの報告会になっていました。何十人もの人が集まって、朝から話を聞いているだけ。こんな人件費の膨大なムダを続ける企業も多いのです。集まることが全て無意味とは言いませんが、朝から晩まで同じ場所に一緒に必要は無いと思います。
自由な時間に仕事ができれば、子育てをしている人や、親の介護をしなければならない人など、優秀だけれどもプライベートな事情でフルタイムで出勤できない人に活躍のチャンスが巡ってきます。企業にとっても、このような人材を有効に活用できれば、業績向上が期待できます。
働く側からは、通勤ラッシュから解放され、オフィス以外の良好な環境で仕事ができ、クオリティオブライフの向上が期待できます。例えば、朝が苦手な人なら仕事時間を昼から深夜にシフトさせる。そんな自由が得られるかもしれないのです。
テレワークが馴染まない仕事ももちろん存在します。しかし、ホワイトカラーの多くの仕事では、企業と従業員双方にメリットがあるはずです。にも関わらず、テレワークが広がらない理由の1つは、経営者側の不安があると思います。それは人事評価の問題です。
テレワークで時間に縛られない働き方を導入すると、従業員を「正しく」評価しなければならなくなります。仕事のプロセスが見えなくなり、本当に何時間労働しているかもわからなくなります。となると、会社に対する貢献によって社員の評価を数値化することが求められます。
人事評価を「正しく」すれば、会社に貢献する人は残ることになり、貢献していない人が辞めていくことになるのです。人事評価が正しく行われなければ、優秀な社員は会社を離れ、能力のない社員だけが残ってしまう最悪の展開になります。
カルビーはジョンソン&ジョンソンからスカウトされた松本会長の下で経営改革を進め、丸の内の本社はダーツで席を決めるフリーアドレスにしているくらい徹底した働き方改革をしています。このような会社であれば、問題ないと思いますが、人事評価が曖昧でフェアでない会社は導入に二の足を踏むことになるでしょう。
つまり、テレワークの導入は、その会社の人事制度のレベルを従業員から逆評価されるということでもあるのです。「年功序列」「社内ネットワーク」「やる気や熱意」「人柄」といった日本的な人事評価を未だに引きずっている会社は、成果主義のテレワークは怖くて導入出来ないはずです。
ビジネスパーソンの働き方がこれから劇的に変化していく中で、テレワークへの取り組みはその会社の人事制度のレベルを知るためのリトマス試験紙の1つになると思います。
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編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2017年2月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。