You Can Do Anythingと環境という処遇

170207

組織の論理からは、創造的な飛躍としての革新は生まれない。創造の芽は、個人の自由な活動のなかにしかないから、You Can Do Anythingという自由が必要なのだ。

組織の期待のもとで働く限り、いかに有能な人材でも、枠のなかでの創意工夫にとどまる。期待が大きければ、自由な創意工夫の余地も大きい。しかし、その自由のもとでは、組織規律を超え得ず、組織を変えることはできない。

変革をもたらす人材は、組織を超え、あるいは組織を破壊する。そして、新たなる組織化の力で、全く異なるものへと再組織化させる。破壊して、創造する。それが革新を担う人材の機能だ。

創造は組織の破壊ではなく、その後にくる組織化だ。組織化を担う人材には、主体として組織化する能力が求められると同時に、組織内人材には違いないのだから、客体として組織化される面がなくてはならない。これは、普通の企業人事の世界で、リーダーシップ論として展開されていることの要点である。リーダーとは、組織変革の旗手として組織のなかにいると同時に、組織を外から相対化できるだけの距離をもたなければいけないのだ。

リーダーシップは、他人に規律を課すものではない。他人に規律を課す以上、自己が従わなければならない規律が先行する。You Can Do Anythingは、字義通り、何でもできるということだが、何をするかは、自分で決める。徹底した自己規律だ。この自己規律は、完全に対自的なものではない。対他的、即ち、対組織的、あるいは対企業的な側面がある。当たり前だが、対社会的責任がない自己規律などあり得ないのである。

You Can Do Anythingのもとでは、うまくいかなかった場合には、他のやり方もあったであろうという批判に対して反論できない。絶対にいい訳できないこと、結果が全てであるということ、これがYou Can Do Anythingから帰結する厳しい責任のありようである。

責任には、二つある。第一は、何をしてもいいが、何かは必ずなさねばならないこと。第二は、何をしてもいいが、企業が設定した環境、即ち、企業がもつ有形無形の資産の蓄積の有効な活用方法として論理的に帰結してくる事業の構想でなくてはならないことだ。革新は断絶ではなく、創造的飛躍だからだ。

企業が設定した環境は有限であるが、それを制約と考えることはできない。環境は、制約ではなくて、処遇である。環境とYou Can Do Anything、この二つ処遇から、変革が生まれるのである。人材の立場からすれば、処遇を活かす働き方が重要であり、企業の立場からすれば、創造的飛躍が生まれるような処遇の設計が重要なのである。

 

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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