注目の日米首脳会談が10日に行われました。
共同声明の大枠は、以下の通り。→以下は筆者が共同声明から文章を簡素化しています。ホワイトハウスが公表した英語版はこちらをご参照下さい。
(日米同盟)
●日米同盟の確認
→駐留米軍の費用負担に触れず現状維持、辺野古移設推進、日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されることを確認。
●北朝鮮に核放棄を求める
→日米同盟は日本の安全を確保する完全な能力を有し、軍及び同盟国の防衛に完全にコミット。日米韓の3ヵ国協力の重要性で確認。
●防衛イノベーションに関する二国間の技術協力を強化
→宇宙及びサイバー空間の分野をカバー、グローバルな脅威を与えているテロ集団との闘いのための両国の協力を強化。
●日米安全保障協議委員会(SCC:「2+2」)を開催
→日米同盟強化を狙い、日米両国の各々の役割や任務及び能力の見直し。
(経済関係)
●相互補完的な財政,金融及び構造政策のアプローチ
→力強い世界経済の維持、金融の安定性の確保及び雇用機会の増大という利益を共有、国内及び世界の経済需要を強化するため財政、金融、構造政策という3本の矢を活用。
●アジア太平洋地域及び世界における包摂的成長及び繁栄
→両首脳は自由で公正な貿易のルールに基づき,日米両国間及び地域における経済関係を強化。
●両国間の貿易・投資関係双方の深化と、アジア太平洋地域
→米国の環太平洋パートナーシップ協定(TPP)離脱を受け日米は二国間で枠組みを議論しつつ、日本が既存のイニシアティブを基礎として地域レベルの進展を引き続き推進。
●日米の経済対話
→地域及び国際場裏における協力を継続。
(訪日の招待)
●今年中のトランプ米大統領の公式訪問並びにペンス米副大統領の早期の東京訪問を提案
→トランプ米大統領は受け入れ。
共同記者会見は、和やかなムードに終始。
(出所:内閣広報室)
共同記者会見もつつがなくこなし、主要メディアのヘッドラインはこのようになりました。
・安倍首相を歓迎、日本への防衛コミットメントを確認(In Welcoming Shinzo Abe, Trump Affirms U.S. Commitment to Defending Japan)、ニューヨーク・タイムズ
・トランプ、日本の安全保障にコミット(Trump commits to security of Japan)—USAトゥデー
・トランプ米大統領との関係強化のため、安倍首相は外交のフェアウェイでスウィング(To Bond With Trump, Japan’s Abe Takes a Swing at Fairway Diplomacy)—ウォールストリート・ジャーナル
・トランプ米大統領、安倍首相と19秒にわたって握手(Donald Trump shook the Japanese Prime Minister’s hand for 19 seconds)—CNN
・トランプ米大統領、日米安全保障へのコミットに明言し選挙中の発言からシフト(Trump says U.S. committed to Japan security, in change from campaign rhetoric)—ロイター
・トランプ米大統領、安倍首相との奇妙な握手を揶揄される(Donald Trump mocked for ‘awkward’ handshake with Japanese Prime Minister Shinzo Abe)—デイリー・テレグラフ
・トランプ米大統領、日本との通商関係に”公正さ”を要請(U.S. President Trump seeks to promote “fair” trade with Japan)—新華社
・トランプ米大統領と安倍首相、日米戦略的関係の強化を確約(Donald Trump, Shinzo Abe pledge to strengthen US-Japan strategic ties)—インディアン・エクスプレス
・トランプ米大統領、安倍首相に東シナ海の諸島問題を保証(Trump assures Abe over disputed East China Sea islands)—アルジャジーラ
全般的に、日米同盟並びに安全保障の関係を再確認した点にフォーカスしていました。特に共同声明では「核及び通常戦力の双方によるあらゆる種類の米国の軍事力を使った日本の防衛に対する米国のコミットメントは揺るぎない」との文言が盛り込まれ、尖閣諸島問題に関し日本側が米国の支持を取り付けた結果「安倍首相の勝利(The statement amounted to a victory for Abe)」と伝えられています。日米二国間での通商関係や為替に関しては、日本の当局者いわく協議を見送り課題を残しました。
対照的に、新華社は具体的な進展がみられなかった日米通商関係をヘッドラインに掲げました。トランプ米大統領が事前に中国側の要請を受け「ひとつの中国」尊重で合意したとはいえ、米国があらためて尖閣諸島問題で日本側の立場を支持しただけに通商問題を取り上げざるを得なかったのでしょう。
首脳会談での19秒に及ぶ握手の様子、また手を離した直後の安倍首相の何ともいえないユニークな表情は日本だけでなくCNNをはじめ各メディアが面白おかしく扱ったものです。トランプ米大統領が握手中に空いた左手でポンポンと安倍首相側の右手に触れる場面もあり、トランプ米大統領が安倍首相へ寄せる熱意が感じられた瞬間ですね。なお、共同記者会見の内容はこちらでご覧頂けます。
共同記者会見でも、不思議な光景が見受けられました。トランプ米大統領は日本の記者からの質問で翻訳機を使う仕草をみせたものの、安倍首相が発言する際に翻訳機を耳に着用しなかったのです。ホワイトハウスのサラ・ハッカビー・サンダース氏は「原稿を確認済みであり、かつ共同記者会見前に綿密な協議を行っていた」と説明していますから、翻訳機を着用しない米大統領の姿は安倍首相への信頼の証と言えるのではないでしょうか。フロリダ州マールアラーゴへの移動と宿泊に関し、事前にホワイトハウス高官がトランプ米大統領が個人的に費用を負担した”personal gift”と説明済みで、安倍首相が特別な存在であることは明白です。トランプ米大統領の満面の笑みの奥で、どんな計算を働かせているかは別の話ですが・・。
トランプ米大統領、ツイッターで安倍首相とのツーショットを披露。
(出所:Twitter)
米大統領の別荘へエアフォース・ワンで向かうという異例な待遇を受けた安倍首相夫妻ですが、他にも異例な事態に直面していました。それは、メラニア夫人の不在です。CNNは「メラニア夫人なしで、昭恵夫人はワシントンD.C.で単独行動余儀なくされる(Without Melania Trump, Mrs. Abe rolls solo in Washington)」と伝えていました。オバマ前米大統領との会談のためワシントンD.C.を訪問した2015年4月にはミシェル夫人も姿を現したものですが、極めて稀なケースです。ただ、メラニア夫人はスーパーボウルで優勝したニューイングランド・ペイトリオッツのオーナーを交えたマールアラーゴでの晩餐には姿を現していたため、ここで昭恵夫人と交流したのでしょう。
(カバー写真:CNN)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年2月11日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。