米連邦準備制度理事会(FRB)のタルーロ理事が10日、トランプ米大統領に辞任する意向を書簡で伝えました。トランプ氏がドッド・フランク法の撤廃に向けた米大統領令に署名してから、ちょうど1週間後となります。
2009年1月28日に着任したタルーロFRB理事は64歳で、銀行監督を担当。金融危機後に銀行規制担当の副議長を設置することが決定したもののオバマ政権は誰も指名せず、実質的にタルーロ理事に一任してきました。タルーロFRB理事はFRB内の監督規制委員会の委員長、そして2009年に国際決済銀行下で設立された金融安定理事会に常設された監督規制協力委員会の委員長を務めた経歴を持ちます。任期満了は2022年1月末だったものの規制緩和に向けトランプ米大統領が方向転換したため、市場関係者の予想通り辞任の運びとなりました。
4月15日頃(on or around April 15th)と明記されており、3月14〜15日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)には出席する予定。タルーロFRB理事と言えばイエレンFRB議長やブレイナードFRB理事と同じくクリントン政権メンバーで、米大統領選挙中はハト派寄りの姿勢を打ち出していたことが思い出されます。
タルーロFRB理事の辞任を受け、トランプ米大統領が指名できるFRB理事の数は2名から3名へ増えました。また、銀行監督担当の副議長へ指名が注目されます。現時点で俄に注目されているのはゼネラル・エレクトリック(GE)傘下のGEエナジー・フィナンシャル・サービシズの最高経営責任者(CEO)を務めるデビッド・ネイソン氏(46歳)。GEの金融子会社だった2010〜13年にはGEキャピタルの最高規制担当責任者並びにコンプライアンス・リーダーで、サブプライム住宅ローン危機の最中にあった2005〜09年には米財務副次官補(金融機関担当)として不良債権救済プログラム(TARP)の立ち上げに尽力した人物です。2002〜05年へ米証券取引委員会(SEC)に籍を置き、サーベンス・オクスリー法(上場企業会計改革および投資家保護法)の成立に注力しました。ちなみにGE自体はトランプ政権下の製造業評議会にジェフリー・イメルトCEOが参加し、戦略政策フォーラムではGEの元CEOでトランプ米大統領が尊敬するジャック・ウェルチ氏が参加しています。
ブッシュ政権(息子)政権で活躍、弱冠46歳にして副議長の最右翼。
その他、ドッド・フランク法の撤廃支持派のBB&Tのジョン・アリソンCEO、タカ派で知られた前カンザスシティ連銀総裁で現米連邦預金保険公社(FDIC)の副議長であるトーマス・ホーニグ氏、最右翼であるネイソン氏の元上司にあたるポール・アトキンスSEC元委員長などの名前が取り沙汰されています。
ゴールドマン・サックスのブランクファインCEOが資本を縮小しレバレッジを効かせたいとの発言が報じられた一方、金融危機後の法制度改正に合わせ各銀行も対応してきたためドッド・フランク法の完全撤廃には慎重寄りなスタンスです。いずれにしても、民間団体のFed Upが称賛の声を送るFRB理事だっただけにタルーロFRB理事の辞任のニュースは金融株の上昇を誘いました。
(カバー写真:Federalreserve/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年2月11日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。