聖徳太子とか鎖国が当時は使われていなかったから、歴史教科書で使うべきでないというなら、ほかにもいっぱい使うべきでない言葉があるので首尾一貫していないという投稿をしたら、さまざまな意見が寄せられたので補足する。
当時、使われなかったといえば、やはり「太平洋戦争」だ。私は必ずしも「大東亜戦争」と呼べという意見に与するわけでないのだが、もし、当時の名称ならそういうことになる。少なくとも太平洋戦争はおかしい。
私は「太平洋戦争」も大陸を軽視することになるが、「大東亜戦争」というのも、必ずしも最初からそういうような意図でも呼び方でもなかったこともあるので、できるだけ、「先の大戦」とか「昭和の一連の戦争」とか言っている。
1941年以降の戦争だけを指すなら“第二次世界大戦アジア太平洋戦線”とでもいうべきだろう。1937年からの大陸戦線は、支那事変、日華事変、日中戦争と変遷してきているが、当時、日本は日中という言葉を使っていないのだから少なくとも日中戦争はない。
日本は辛亥革命以降の中国を、大支那共和国といっていたのを、昭和のはじめに中華民国というようにしたが、それは正式国名としての場合であって、地理的名称や国としての略称は支那だったし、中華民国を一字で略称するときは、「中」でなく「華」だった。
「中」は中華人民共和国について初めて使われたものだから、「日中戦争」などというのはまったくおかしい。
元寇をモンゴルの襲来と呼ぶこともおかしい。それでは、当時のモンゴルが中国の正統政府でもあり(文永の役の時は華北、弘安の役のときは全体)、高麗もフビライに日本侵略を勧め、主力部隊として参加したことを無視した言い方だ。
天皇号はいつから使われたかという議論の大誤解
それから、ついでに天皇号だが、これはそもそも肝心な観点が忘れられている。
天皇という表記法は推古天皇から元明天皇にかけての時期にかけて徐々に習慣化したもののようだが、読み方は「すめらぎ」とか「すめらみこと」であって、それは、推古天皇より前にあったものだ。「あめのしらしろしめすおおきみ」もあって、それは直訳すると「治天大王」だが、これも、読み方がさきだ。
スメラギを漢字でどう表現するかというのは、試行錯誤的に展開し、天皇に落ち着いたと言うだけのことだ。天皇に名前がなかったわけでもないが、複数あることもあるし(織田信長だって三郎だったり信長だったり弾正忠、上総介などいろいろでどれが正しいわけでない)、漢字はそもそもは使われなかった、あるいは、使う人がほとんどいなかったのだから歴史書のなかでどう呼ぶか困って、中国風の二字好字の諡号に統一したのだから、従来通り、諡号で呼んで、ただ、「これらの表記法は、律令制の確立の過程で決まったもので当時の呼び名でないと書けば良いだけだ。
それがダメというなら、会津藩とか彦根藩とかやめて、松平肥後守御領知とか井伊掃部頭御領知とか正しく書くべきだ。
つまり、教科書でのこうした似非学者たちのお遊びは、皇室と明治体制を誹謗中傷するための口実に過ぎないのである。