米国ニューハンプシャー大学公衆衛生研究所障害者センターから、2016年版『障害者統計年鑑』が公表された。この統計調査は、国立機関(National Institute on Disability, Independent Living, and Rehabilitation Research)の助成で、障害者センターによって毎年実際されている。ここではその要旨を紹介する。
2015年に、米国人口に占める障害者の割合(障害率)は12.6%であった。2010年には11.9%であったが、13年・14年・15年は連続して12.6%に上がった。割合は州によって異なり、最も低いユタ州は9.9%で、最も高いウェストバージニア州は19.4%であった。
障害率は年齢とともに上昇する。5歳未満の人口では1.0%未満、5〜17歳では5.4%、18〜64歳では10.5%だが、65歳以上では35.4%と非常に大きくなった。障害者人口だけを取り出して年齢分布をみると、半数(51.1%)が18〜64歳であり、41.2%は65歳以上となった。すべての障害分類で年齢とともに障害率が増加している。
18〜64歳の雇用率は障害者では34.9%で、障害のない人の76.0%と比べ41.1%の差がある。障害者の雇用率にはワイオミング州の57.1%からウェストバージニア州の25.4%までの相違がある。30州で障害者と非障害者の雇用率格差が40ポイントを超えている。雇用率は聴覚障害者(51.0%)と視覚障害(41.8%)が最も高く、自己管理障害者(15.6%)と自立生活障害者(16.4%)が最も低い。ここで、自己管理障害者とは入浴や着衣に問題を抱える人、自立生活障害者とは身体的・精神的・感情的問題によって一人で買い物に出かけたり医者に行ったりするのがむずかしい人を意味する。
就労年齢の米国市民のうち、障害を持つ人の5人に1人以上(21.2%)が貧困状態にあり、障害のない米国市民では貧困率は13.8%であった。障害者の喫煙率は23.4%であり、障害のない人の14.9%よりもはるかに高い。同様に、障害者の肥満率は39.9%で、障害のない人では25.4%であった。
『平成28年版障害者白書』によると、わが国では国民のおよそ6.7%が何らかの障害を有していることになっている。この値は米国の12.6%と比較して低い。このように両国で相違があることは以前より知られており、交通事故で障害を負う人が多く、また傷痍軍人が存在する点と、わが国の障害者認定基準が厳しい点が理由されてきた。しかし、65歳以上の35.4%が障害者と計算されている点に注目すると、わが国では介護サービスの対象となる自己管理や自立生活に問題を抱える人々が障害者に分類されている可能性がある。両国の相違については年鑑等のいっそうの読み込みが必要である。