経済産業省の執務室施錠は当然の処置

山田 肇

経済産業省では2月27日から全執務室の扉を電子的に施錠した。これについて、経産省記者会は27日、同省に撤回と経緯の説明を求めることを決めたと報道されている。「取材対応を含めた情報公開への制限となる懸念がある。」からだそうだ。

朝日新聞の記事は「非公開マニュアル」という言葉を使って批判しているが、その記事の通り、マニュアルが「取材内容をメモにして広報室に報告することや、執務室とは離れた場所で取材を受けること、自宅での取材対応を原則控えることなど」を求めているとしても、民間企業を基準にすれば当たり前の取材対応方針である。

この問題については2月21日の大臣記者会見でも質疑があった。記者が「そもそもセキュリティチェックとかしている上で鍵を閉めて対応するというのは、そういったことによって防げるような想定される事案があるのか。」と質問し、大臣は「別に個別の事案に対応してということではありません。世の中一般上、セキュリティ管理のレベルに合わせたということであります。」と回答している。

この勝負は記者クラブの負け。民間企業並みの情報管理体制になっただけの経済産業省に対する反論として持ち出す理由がおかしいからだ。記者の言う通り、経済産業省では玄関でセキュリティチェックを行っているが、それさえ通過すれば今までは自由に執務室に入ることができ、その結果、秘密の情報が洩れる恐れがあった。それさえも、記者は想定できないのだろうか。

情報公開という言葉もおかしい。「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」で行政情報の公開が義務付けられているが、検討途中の情報はその法律によって公開の対象外である。経済産業省が制定した『情報公開法に基づく経済産業大臣の処分に係る審査基準』で法第5条第5号の解釈として詳しく説明してある通りだ。執務室に入り込み検討途中の資料をのぞき込むことが、情報公開を理由にして許されるはずはない。

記者クラブ制度の弊害は繰り返し指摘されてきた。今回の件も、執務室に自由に出入りできていた記者クラブ所属の記者が不満の声を上げているとしか見えない。