3月1日だった。経団連の「採用選考に関する指針」で言うところの、広報活動スタート時期である。とはいえ、メディアでの取り上げ方は、おとなしめの印象だ。全国紙のこの日の朝刊では、就活ネタをまったく書いていないものもあった。朝日新聞などがそうだ。毎日新聞も実に総花的な内容を社説でふれただけだった。この日の夕刊や、それ以前の号で触れていたりはするのだが。
リーマンショック後の、求人数が減り混乱した時期や、就活の物理的、精神的な過度な負荷が社会問題化した頃よりも、さらには就活時期の相次ぐ変更で混乱した時期に比べると、就活のニュースバリューも減っているということか。いや、そんなことは決してなく、その割に取り上げられているともいえる。
実際はとっくに始まっているわけで。取材で就活生と会っても、やれインターンシップだ、早期型セミナーで、むしろ就活時期は広がっているといえる。2月中にも大手の説明会や選考はすでに始まっており。上場ベンチャーなどでは既に最終面接の手前まできているところもあり。よく「通年採用への移行を(この通年採用も、通年で選考を行うのと、入社時期が通年なのはまったく違うのに、言っている人自体も理解せずに発信されているのだけど)」なんていう意見があるが、実際には、水面下の前倒しというカタチで、時期はとっくに多様化している。
そういうこともあってか、3月1日に関する言い回しも「就活解禁」と書くやり方もあるが、「本格化」「プレエントリー開始」など様々だ。リクナビから届いた冊子の送り状は「プレエントリー開始」とあった。
就活時期の変更がいったん落ち着いたこと(来年度以降のことはまだ分からないが)、売り手市場化したこと(短期の売り手市場化だけでなく、今後の若年層の減少も意識されている)などで、以前ほど就活が大変だという印象はなくなった。数々の論争を呼んだが、就活時期の議論「だけ」をしていても意味がないことにみんな気づき始めたのではないか。こういう建前のルールのかわし方がこなれてきたのだとも言える。そんなこともあり、3月1日の就活報道の景色もいつもと違うという印象だった。
もっとも、学生の負荷は相変わらずだし、学業阻害も根本的には解決されていないのだが。議論をサボっちゃいけない。
というわけで、個人的にも今年はこの問題に関するウェート高めでいこうと思う。頑張りますかね。
編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2017年3月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。