仏独で左翼勝利?! で欧州は大荒れ模様

八幡 和郎

ドイツでメルケル敗北が有力な可能性に

ドイツの次期首相候補に躍り出てきたシュルツ氏(Facebookより:編集部)

ヨーロッパ各国の政治が大荒れ模様で、政治だけでなく経済も大荒れ模様だ。ドイツでは社民党の社民党の首相候補ドイツでメルケル敗北が有力な可能性にヨーロッパ各国の政治が大荒れ模様で、政治だけでなく経済も大荒れ模様だ。

ドイツでは社民党の首相候補マルティン・シュルツが掘り出し物で、人気沸騰、メルケル首相と支持率で方を並べ、秋の総選挙の勝敗は全く分からなくなった。

シュルツはフランスのバカロレアと同じ大学入学資格試験であるアビトゥーアに失敗して、アル中になったり苦労したあと書店経営をしたのち政治家になり、欧州議会で長く活躍し、ヨーロッパ魏会議長を務めた。ベルルスコーニ伊首相と喧嘩したり、ギリシャのチプラス首相に厳しすぎる財政規律を求めないように主張して話題になった。

経済政策において賃上げや投資の拡大を主張しており、それはヨーロッパと世界がドイツに望んでいることでもある。もともと、メルケルはヒラリーと盟友だったが、ヒラリーの敗北でツキが落ちたのかもしれない。

フランス大統領候補の最新世論調査(3日)で初の1位に浮上したマクロン氏だが…(Twitterより:編集部)

現時点では中道左派のマクロン優位だが

一方、フランスでは、決選投票に残るのが、極右と極左チックな候補だけになるという悪夢が現実性を増している。

フランス大統領選挙は二回投票で、第一回の投票での上位二人が決選投票に進める。今回の候補は、いまのところ、極右のルペン、共和党(中道右派)のフィヨン、保革の垣根を越えた創造を訴える中道左派のマクロン、社会党だがベイシック・インカムなど大胆すぎる公約のアモン、左派党(社会党左派離脱組と共産党)のメランションだ。

最近の世論調査ではルペンが30%、(最近は支持が減った)、フィヨンが20%弱、(支持が増えた)マクロンが20%強、アモンが15%ほど、メランションが15%弱だった。

もともとは、フィヨンが断然優勢だったが、ペンロープ事件(妻と子供たちを秘書として架空雇用し一億円以上の公金詐欺の可能性)で支持を落としていた。

ここしばらく、マクロンは、フィヨンの失墜に乗じて、バイユというこれまで二回の大統領選挙に出馬したベテラン政治家などの支持を取り付けて中道派も固め、フィヨンが右派的に過ぎると嫌っていた共和党左派にも支持を広げ、もともとオランド政権の閣僚なので社会党右派の支持も見込めて支持を伸ばしていた。

そして、ルペンと決選投票になっても、マクロンなら60%以上取れそうだった。これなら、アモンとメランションが左派連合を組んでも、なんとか、決選投票には残れそうだった。

極右と極左の決選投票になる可能性が出てきたフランス大統領選挙

ところが、フィヨンの訴追が決まった。フランスでは3月17日に大統領選挙に必要な推薦人名簿の提出だが、15日に手続き開始といういかにも意図的なタイミングで検察は設定。そこで、フィヨン陣営からは、支援辞退が続出し、立候補を取り下げざるを得ないかもしれない。

そうなると、短期で代わりの候補となれるのは、ジュペ元首相しかありえない。ジュペはシラク元大統領の後継者とみられていたが、政治資金疑惑でチャンスを失い、今回も最有力視されながら、クリーンといわれたフィヨンに公開討論会での劣勢が響いて敗れていた。

本来なら、リベラルで、中道や左派にも受けが悪くないジュペが出てくると勝利間違いないはずなのだが、すでにマクロン氏が支持を伸ばしているし、ジュペ氏では共和党右派はむしろルペンに流れるかも知れない。

ただ、フィヨンの現在の数字よりはよりと見られるので、マクロンに大きく傾いた流れを少し還ることは間違いなく、マクロンとジュペの二位争いは予断を許さない。そうなると、アモンとメランションが組めば、マクロン、ジュペと25%あたりを目標に壮烈な争いとなる。

そして、その場合には、一位ルペン、二位アモンという組み合わせになり、その場合は、ややアモンが有利なものの接戦であって、もしかすると、EU離脱などを唱えるルペンの勝利も現実化してくる。そして、それをもっとも期待しているのがプーチンだ。一方、アモンが勝利しても、経済の大混乱は間違いない。

ルペン攻撃の陰湿さは民主主義の汚点に

ルペン氏(Wikipediaより:編集部)

極右のルペン党首に対しては、政界もマスコミも大半が反対しているが、その攻撃が陰湿化しすぎて、民主主義の汚点になりかねない勢いなのも心配。

ルペンはいま二つのスキャンダルを抱えている。ひとつは、ISとルペンを同じだと揶揄されて、ISの残酷さを示す写真をネットで掲載して、一緒にするなと反論したのだが、この残酷な写真をネットで掲載したのが、犯罪だといって、欧州議会議員としての免責特権を剥奪された。

これは、いくらなんでも、悪質な政治的少数派の弾圧だろう。

もうひとつは、欧州議員秘書としての給与で雇った秘書に別の仕事をやらせていたということだ。これも、境界線がはっきりしないことなので、大統領選挙で首位を走る候補者を排除するためには姑息な理由だ。

いずれにしても、こういうわけで、メルケル政権が無事継続するかも不透明になったし、フランスは極右か極左の大統領が当選しかねないという混乱の縁にある。

二月にフランスに行ってきたが、「民主主義がいいものか胸をはていえなくなった」とフランス人の多くが嘆いているのに驚いた。中国を喜ばしたくないものだ。

追伸:フランス大統領選挙についての最新世論調査で大きな動き。現在の顔ぶれだとマクロン27%、ルペン25.5%、フィヨン19%。ただし、フィヨンをジュペに差し替えるとジュペ26.5%、マクロン25%、ルペン24%に。マクロンとジュペという中道左派と右派のまっとうな争いに収斂するよい傾向に収斂する気配も。ちなみに、ジュペは高等師範からENA、財政監察院。マクロンはサルトルと同じアンリ四世高校からENA、会計検査院。私のENAのジュペは先輩、マクロンは後輩です。