ダウ2万1000ドル超えも、春が近いのに芽生え始めた悲観論

ダウは2月27日までに12日続伸し、1987年以来の記録を更新しました。トランプ米大統領の議会演説前に反落した後、3月1日には年初来で最大の上げ幅となる300ドル高を演じ、史上初の2万1,000ドルで引け。わずか5週間で1,000ドルの上げ幅を遂げ、最短記録を更新したものです。ちなみに2万ドル台に到達した1月25日まで、9週間かかったとはいえ過去2番目のスピードでした。ただ、1万ドルから1万1,000ドルへ上昇するには10%上昇する必要がある半面、2万ドルから2万1,000ドルはたった5%高に過ぎないため意味は変わってしまいますが。

トランプ政権発足で、いかにリスク資産へ資金が流入してきたか分かります。トランプ米大統領自身、演説で米株高を大いに好感していました。

米大統領選後、米株相場の時価総額は3兆ドル拡大したとご満悦。ちなみに、CNNはS&Pダウ・ジョーンズ・インデシーズのデータを元に2.4兆ドル増加したと伝え、「ほぼ正しい」と評価しています。ちなみに3月2日までの米株相場時価総額は、約25兆ドル。

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(出所:Twitter

動画配信アプリで知られるスナップチャットの親会社スナップの新規株式公開(IPO)からも、鼻息の荒い強気相場の趣きが感じられます。3月1日にIPO価格を仮レンジ14〜16ドルを上回る17ドルに設定し、2日の上場で初値は24ドルをつけそのまま44%高の24.51ドルで取引を終えました。桜の季節を目前にマーケットはまさに我が世の春といった趣きです。ところが、ここにきて変化が訪れつつあります。

3月利上げの話ではありません。

個人投資家の間で、弱気派が台頭しているというのです。

米国個人投資家協会(AAII)の週間調査によると、向こう6ヵ月間で株価が下落するとの予想、いわゆる弱気予想は前週から3ポイント上昇し35.6%でした。米大統領選挙前にあたる2016年10月19日週以来の高水準となります。対して向こう6ヵ月に上昇するとの予想、いわゆる強気予想は37.9%と前週から0.6%低下し、弱気派を上回ったとはいえ米大統領選直後の2016年11月24日の49.9%を下回った水準を保ちます。中立との回答は25.6%と前週から2.8%低下していたため、足元の急激な上昇を振り返り高所恐怖症に陥った中立派の一角が弱気に転じたのでしょう。

オマハの賢人と呼ばれるバークシャー・ハサウェイのウォーレン・バフェット氏は、株主宛てに送る毎年恒例の書簡にて米国経済の「奇跡的な」活況は続くとコメントしただけでなく、CNBCのインタビューに応じた時には米株相場は「全くもってバブルの領域にない」と発言。米国債利回りが非常に低い水準にある環境を踏まえ、「金利と比較すれば米株はまだ割安な方だ」と豪語しました。Fedの利上げにも楽観そのもので「金利が7〜8%になれば、株式相場は格段に割高になる」と語ったものです。Fedがそこまで利上げするシナリオはないに等しいですから、米株に至って強気な姿勢が伺えます。 米大統領選直前から、200億ドルもの資金を米株相場に投じただけありますね。

AAIIの米国個人投資家調査は、必ずしも正確に米株相場を予想しているわけではありません。しかし1987年10月19日のブラック・マンデー直前の数値はというと、強気派が37.0%、弱気派が33.0%、中立派が30.0%と、足元とさほど変わらないのです。あの頃と同じく米株相場に偽ニュースが直撃するなど、いろいろと符合することが多く不気味さは禁じ得ません。

(カバー写真:Francisco Antunes/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年3月3日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。