3月利上げに、勝負あり。
イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長とフィッシャーFRB副議長は3日、遂に明確なヒントを口にしました。
イエレンFRB議長は、講演で「経済指標が予想通りの結果を示し続ければ、ゆるやかな利上げが適切と判断する」と発言。さらに「今月の会合で、委員会は雇用とインフレが予想に従って進展し、さらなるFF金利の調整が適切かどうか評価する」と3月利上げのサインを点灯させたのです。2016年12月FOMCで示した見通しに合わせ年内3回の利上げに言及したほか、失業率は4.8%でPCEデフレーターもコアで前年比1.7%とインフレ目標に近く、かつ海外から派生するリスクが低下したと指摘。Fedはビハインド・ザ・カーブにないとも付け加えました。
年内3回の利上げにも言及。
(出所:CNBC)
早くから最大限の雇用とインフレ2%という目標達成に近づいていると発言してきたフィッシャーFRB副議長も、講演後の質疑応答で利上げ見通しを「仮に引き上げる努力があったなら、私もそれに加わる」と言い切ったのです。それだけでなくNY連銀のダドリー総裁やサンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁など「多くの米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者のアドバイスは正しいと捉え、強く支持する」と明言。2016年11月以降、「比較的短期間に大いなる変化を確認した」とコメントしました。それだけでなく「過去3ヵ月間、悪化を示す経済指標は出てきていない」と述べました。
こちらで示した通りマーケットが3月を織り込まないほどでしたが、NY連銀総裁とサンフランシスコ連銀総裁の発言で幕開けした3月利上げキャンペーンは、これで一段落した格好です。
JPモルガンも、遂に5月利上げを3月に修正してきました。年内利上げも2回から3回に変更、3月、6月、9月を予想しています。2018年は2回の予想で維持しましたが、バランスシートの正常化(再投資終了)は6月ではなく3月に前倒ししました。主席エコノミストのマイケル・フェローリ氏が「突然(利上げへの)論理的根拠を転換させた理由は依然として明確ではない」とのコメントを寄せたように、1月FOMC時点で利上げ票を確認せず、1月FOMC議事録で次回利上げを検討するような文言を挟み込まなかったため、今回の劇的変化は注目に値します。
何度も申し上げますが、個人的には財政出動を検討するトランプ政権を牽制するだろうと昨年末に指摘させて頂きましたが、まさか3月利上げで動いて来るとは予想外です。しかもあれだけ、新政権の経済政策を見極めるには時期尚早と繰り返していたので意表を突かれました。それはこちらのチャートが示すように、マーケットも同じでしょう。ダウは上昇気流に乗ったままで利上げの影響は軽微に見えますが、あとは税制改革やインフラ投資、規制緩和の成果が試されます。奇しくも予算案はFOMCを予定する14〜15日の翌日にあたる16日に発表されるとの報道がありますが、その頃のマーケットは現状のユーフォリア状態を維持しているのか。蘭総選挙を15日に予定することもあり、バックストリートならぬボラティリティがそろそろバックする可能性に注意です。
(カバー写真:Federalreserve/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年3月4日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。