文部科学省は2016年夏に中学3年生の英語力調査を実施した。「聞く・話す・読む・書く」の4技能のうち、英検3級程度以上と評価された生徒が5割以上だったのは「書く」力だけだった。他の3技能はいずれも3割前後にとどまった。
この調査について文部科学省は報告書を公表している。第1部で生徒の成績を分析し、第2部は英語力調査を担当した中学教員についての調査結果である。『「英語が使えない英語教員」とは情けない』という記事をアゴラに掲載したこともあるので、第2部が興味を引いた。
英語力調査では「話す」力を面接によって評価する。英語力調査実施校の教員が面接を担当するが、評価結果がばらつかないように、教員がDVDを用いて事前にトライアル採点を行う研修が実施された。DVDに登場する生徒役は、カタカナ読み、随所で詰まる、自信がなさそうに話す、文法の誤りがあるといった演技をする。教員はそれを採点して、文部科学省が設定した採点(正答)と比較した。
その結果、中位レベルの生徒について採点結果が特に正答から離れたという。設定どおり2点と採点した教員は20%で、1点が68%、0点が10%、3点(満点)が1%というのが、もっともばらついた結果である。採点基準の表現にあいまいさがあり、それがばらつきを招いたと分析されている。
今回は600校6万人を対象とした調査だったが、今後、全国拡大を図るには採点基準をより明確にし、担当教員に対する事前研修も徹底する必要に迫られる。英語力調査は英検3級程度の力が備わったかを評価するものなのだから、いっそのこと生徒に英検を受検させるという代替案のほうがよいのかもしれない。
余談になるが、研修DVDと付属資料を物理的に配布するのではなく、ネット配信しても構わないかという質問もしている。6割以上の教員がネット配信で取り扱いが容易になるとは「どちらかといえば思わない」「思わない」と回答している。これから教育の情報化を進める際には、教員が教材のネット配信を受け入れないことも阻害要因になるだろう。