細野豪志さんの投稿から、大学無償化に関しての話題が盛り上がっています。一連の流れは下記の通りになっていますが、現在安倍首相も大学無償化に前向きになっているので、この機会に貧困家庭でも進学できる体制にしよう!というのが細野さんの主張のようです。そこに井上さんが学力判定をして、優秀な人だけ入れるべき、と主張されています。
最終的な細野さんの反論を読んでみると「貧困が原因で進学が阻まれるべきではない」という主張はわかるのですが、優秀な人だけに補助を出すということに賛成か反対かはわかりません。まだ議論も端緒についたところなので、ハッキリとした結論がないのかもしれません。
個人的には井上さんに賛成です。さらに言えば、大学へ進学するための予算を国が出すよりも、貧困家庭用の職業訓練をもっと充実してほしいと思います。
大学は若いうちに行かなければいけない?
まずそもそもの話として、大学というのは全入が求められるものなのでしょうか?日本の高校の場合、97%もの進学率になっていて、ほとんどの人が進学しています。一方、大学進学率は日本は63.36%です。ちなみに外国では、韓国95.35%、オーストラリア90.31%、アメリカ85.80%、ロシア78.65%、ドイツ68.27%、フランス64.39%と日本よりも高い国はたくさんあります(参考:世界の大学進学率 国際比較統計・推移)。
これだけを見ると、日本はもっと大学進学率を上げたほうが良いように見えます。ただ、諸外国は社会人から大学に行く割合というのが高く、アメリカで23.4%、オーストラリアで26.5%が25歳以上で大学に入学しているそうです。ちなみに日本は2.0%と極端に低い割合になっています(参考:大学における社会人の受入れの推進について(参考資料))。
「15の春は泣かせない」と高校進学率を上げたことは正しかったと個人的にも思います。ですが18歳から必ず大学に行く必要性はないのではないでしょうか。むしろ大学進学率を上げるのであれば、日本は社会人大学生の割合を上げる必要があるように思えます。ですので生活保護家庭であっても、まずは働いて、必要に応じてお金を貯めてからや奨学金を活用して大学へ入学するという形が自然ではないかと思います。
井上さんも主張するように、優秀な子が貧困のために進学できないという事例はごく少数だと思います。かつ井上さんもそういう人に対しての進学援助は推進すべきとおっしゃっています。逆に一般の人、優秀ではないごく普通の人に対して大学進学を18歳からできるように、国がお金を出す意味はあまりありません。むしろより高度な職につける職業訓練こそ、必要ではないでしょうか。
より高度な職業につくための職業訓練の拡充を
18歳で高校卒業後、働くと言っても高い給与をもらえる職場で働くことは難しいでしょう。土木作業などの肉体労働を中心として、飲食店などが中心になります。場合によっては正社員ではなくアルバイトという可能性もあります。高校で十分な職業訓練は出来ていないため、安い給与の職場で働く可能性が高いと言えます。
だからこそより高い給与をもらうために職業訓練でスキルをつけてキャリアップができれば、労働者にとっても企業にとってもメリットがあります。しかしながら、私が見た中では実務で耐えられないレベルの低い訓練も多く存在しています。そういったレベルの低い職業訓練を受けたとしても、残念ながら初心者として会社で扱われる事になり、結果的に低い給料しかもらえません。
またより高度な職業につくための職業訓練というのは圧倒的に不足しています。まったくゼロの状態から学ぶというカリキュラムは存在していますが、3年5年と仕事をした人がさらにキャリアアップするための職業訓練と言うのはほぼありません。さらに今多くの投資が行われている分野、例えばAIやVR技術について学べるカリキュラムもほぼ存在していません。
個人的に私は障害者の就労支援を手伝っているのですが、そこで困っているのは人材の不足です。特に専門家が不足しており、これは障害者の就労支援でも健常者の職業訓練でも変わらないでしょう。指導・教育できる人材が不足しているために、より高度な職業訓練が行えていないのではないでしょうか。
現在も大学へ行かずに働くことを選択した貧困家庭の若者はたくさんいます。大学進学は18歳でなくてもできます。それよりもまずは少しでも高い給料のもらえる仕事にキャリアアップできる支援を、国には優先して欲しいと思います。