熊本地震に学ぶ情報通信技術の活用

情報通信政策フォーラム(ICPF)は2月27日にシンポジウム「熊本地震に学ぶ情報通信技術の活用」を開催した。その模様は、当日の配布資料などを含めて、ICPFサイトで公開している。この記事では、そのエッセンスを紹介する。

シンポジウムでは「事前の備え」の重要性が繰り返し強調された。

ドローンは被災後の状況を把握するのに有益だが、突然飛ばすのではなく、事前に自治体と防災協定を結び訓練などにも参加しておくと価値が高まる。災害時にドローンを使って緊急対応するチーム「DRONE BIRD」は、神奈川県大和市や埼玉県横瀬町などとすでに協定を結んでいるそうだ。

行政にも事前の備えがある。総務省の講演では、自治体からの情報を一斉に人々に伝えるシステムとしてLアラートを整備し、災害対策用移動通信機器や移動電源車を準備し、避難所などに無線LANを設備するなどの事業が紹介された。

東日本大震災・熊本地震に共通する教訓として、自治体職員の所在確認、住民の安否確認をする仕組みの重要性が語られた。自治体職員も住民も日常的に広い範囲を動いており、災害発生の瞬間に地元にいない人々も多い。一方で、住民についてはどの避難所にいるかは自主申告が前提で、登録しないと行方不明者扱いになるのが現状だそうだ。マイナンバーなどを活用して、できる限り短時間で安否が確認できる仕組みを作っておく必要がある。

「マスメディアだけでは被災地の意見や実情は伝わらない。地域が独自でメディアを持つことが重要である。」という被災地からの生の声を聴くことができた。それでは、具体的に独自メディアをどのように準備しておくか、これも今後の課題である。

自治体も企業も、東日本大震災を教訓として業務継続計画を作るようになった。熊本市にも計画は存在したそうだ。しかし、実際には平時には想定していなかった業務が大量に次々と発生し、多種多様の対応が求められたという。罹災証明書の発行など、平時業務には相当しない新たな業務が発生したのだ。どの業務を優先し、どの業務をあきらめるかという決断を組織としてどう行うかについて、平時から議論しなければならない。

内閣府は、新年度から、災害時に各省庁の対応を統括する内閣府防災担当の審議官を2人体制に強化するという。24時間いつでも適切に決断するために必要な増員であり、歓迎する。

災害対応に企業がどのように力を提供するかも議論された。グローバルに対応するレベルから現地に委ねるレベルまで、対応レベルをあらかじめ定めてグローバルに連携している多国籍企業の実例が紹介された。また、災害時にはパソコンを貸し出すと決め、備えている日本企業もあるという。過去の経験から業界としてどのように対応するか事前に決めておく、業界内連携の必要性も指摘された。

シンポジウムの成果が少しでも役立つように、ICPFで公開している情報をご一読いただければ幸いである。