営業活動は短時間で回数重視!長時間商談は時間のムダ

写真は財津氏。

あなたは、営業マンの役割をどのように理解しているだろうか。企業にとって営業マンは売上を計上する重要な人員である。そのため営業マンのスキルアップに費やすコストが膨大になることもめずらしくない。

財津/優(以下、財津氏)は外資系企業に勤務する営業マンである。世界的規模の外資系医療機器メーカーに在籍し、トップセールスとして毎年表彰されている。その営業手法は社内外でも話題になっている。

今回、紹介する『世界No.1営業マンが教える やってはいけない51のこと』(明日香出版社)は、財津氏の営業スキルが審らかに紹介されている処女作でもある。

■面談は短時間が基本

――営業マンなら誰もが覚えがあるだろう。営業をはじめたばかりの頃、上司や先輩から,「お客様と仲良くなってこい!」と言われたことはないだろうか。

「お客様とどうしたら仲良くなれるかを考えて、共通の話題を見つけたり、相手の反応が良い資料を使ったり工夫を凝らしている人を見かけます。お客様と話が盛り上がれば、長時間のトークをすることができるようになります。そうなれば、それなりの手ごたえを感じるはずです。」(財津氏)

「長時間の話ができると、気持ちが充実してとても大きな達成感で満たされるようになるものです。コツをつかめば営業ノウハウを会得したと錯覚をします。」(同)

――ところが、ここに大きな壁が存在する。長時間の面談ができるようになったにもかかわらず案件が前進する確率は上がらない。

「面談時間が長いことと営業の成果に相関性はありません。面談時間が伸びれば他のお客様へ使う時間が減りますので効率的とはいえません。そして、壁にぶつかりながら、自分が正しいと思ってやってきたことが、実は効率の悪いやり方ではないかと考え、結果につなげるにはどうすべきか試行錯誤を繰り返すようになります。」(財津氏)

「クロージングまでを最短ルートで到達するには、最初からお客様との信頼関係を求めてはいけません。実は、初回訪問はあいさつ程度にして、短時間で帰るべきなのです。2回目以降もできるだけ短時間の訪問を心掛けて、素早く帰るのです。」(同)

――これは、営業活動を分解すればよくわかる。最初の時点ではお客様は警戒しているので緊張感が強い。この緊張感を和らげるにはさっさと切り上げて回数を重ねることが必要である。回数を重ねれば自然に打ち解けてくるものだ。

■時間よりも回数が重要

――これは心理学的にも証明されている法則で、「ザイオンス効果」または「単純接触効果」と呼ばれている。30分の面談を1回するよりも、5分を6回した方が確実に関係性は間違いなく深化するだろう。

「長時間の話をしたぐらいで、お客様の信用を得ることは難しいのです。結果として効率の悪い営業法であると言えるでしょう。順番に気をつけながら目的を持ったトークを行えば、5分であっても十分案件を前進させることができるはずです。」(財津氏)

「慣れてくると、仕事がはかどった気になり充実感を覚えがちです。そんなときこそ、営業においては案件が確実に前進したかどうかを、冷静に分析すべきなのです。」(同)

――もし、あなたが行き着けの飲み屋のキャストと懇意になりたかったとしよう。入店して長時間居座るより、短時間で切り上げて回数を重ねたほうがはるかに関係性は深まるはずだ。緊張感を和らげるのは、時間よりも回数である。

本書は営業マン向けに書き下ろされたものだが、内容自体は平易であることから、様々な場面に照射することが可能である。また、上司のコネタとしても役立ちそうだ。多くのケースを理解することで営業活動の正しい道筋を見つけられるかもしれない。

尾藤克之
コラムニスト