いよいよ年度末の季節である。4月以降の新年度の組織体制や人員配置も発表になる時期でもある。1年間の成果に関わらず、いまのメンバーが居るからやってこれたのも事実。上司は部下への労いと感謝を忘れてはいけない。
沖本るり子(以下、沖本氏)は、「5分会議」を活用した、人財育成や、組織活性化の講師・コンサルタントとして活動している。TBS報道番組Nスタで“プレゼンの達人”と紹介されたこともある。今回は、部下とどのような面談をすることが望ましいかを聞いた。
■面談をお互いの成長の場と考える
――驚いたことに、沖本氏の話によれば、面談において「どうやって部下とかかわっていいのか分からない」と悩んでいる上司が多いそうだ。そんな時に効力を発揮するのが「部下とともに成長できる面談」である。
「面談は、年度初めに決めた目標の進捗確認と、それを踏まえての今後の行動計画や目標の再設定の場になります。上司は都下の話を聞き、客観的に見た部下の現状を伝えて、部下が成長するように導いていくことが必要になります。」(沖本氏)
「部下の成績が目標達成にほど遠いと、つい『なんでこんな結果になっているんだ!』『いったい、これまで何をやってきたんだ!』と責めてしまいがちです。しかし、面談は部下を叱責するためのものではありません。」(同)
――単なるMBOのフィードバック面談であれば、結果の報告のみでも良いかも知れないが、あるべき姿は、「部下とともに成長できる面談」である。単なる結果報告ではない。年度末という総決算において、上司の姿勢は極めて重要な意味を持つ。
「面談の進め方ですが、最初は仕事と関係のない雑談からはじめましょう。『今日は暖かいねえ!』『最近みた映画はなに?』など、話題はなんでもいいのです。雑談から入ることで、その後の本題に入りやすい下地をつくります。」(沖本氏)
「そして、本題である目標の再確認です。『君の今期の目標は○○だったよね』とは言わずに、目標と結果については部下自身の口から語ってもらうことが大切です。部下に目標と結果をきっちりと認識させるためです。」(同)
■面談ではハラスメントに注意すること
――面談の際に難しいのが客観性である。実際に報告をさせてもトークの上手い部下のほうがよく聞こえてしまうきらいがある。ここでは、客観的に聞き分けることが大切である。事実かどうか検証できないものはうのみにしてはいけない。
「ひと通り報告を聞いたら、うまくいっているところをほめます。部下の日ごろの行動で素晴らしいと思っている点もこの機会に伝えるといいでしょう。ほめられたり、認められたりするとうれしく、やる気も上がります。続けて、うまくいっていない点について話します。目標や成果の確認、修正などを部下に考えさせる機会になります。」(沖本氏)
「部下にもし不安があるのなら、不安を取り除けるように誘導していきます。そして、どうすればいいのか考えさせてください。面談がうまくいけば、部下の成長もしかり、上司も部下を動かすスキルを学びますから、お互いが成長する機会になるのです。」(同)
――結果のいかんにかかわらず、部下は1年間がんばってきた。万が一、上司にとって物足りない結果であっても、部下は部下なりに行動したことを認めなければいけない。
「次のような場面を想像してください。『なにやってんだ!新入社員の井上は、お前よりも目標達成しているぞ!』『お前には期待しないことにしたよ!』『売上げ立たないなら辞表を出せ!』。上司は叱咤激励のつもりですが部下はドンドンやる気を失っていきます。上司の気持ちもわかりますが、部下に期待する姿勢を見せることも大切です。」(沖本氏)
「部下は、決して力を抜いているわけではなく、彼らなりにがんばっていると信じてみてください。うまくいかなかったのは、やり方が悪かっただけです。また、責任を問うまえに上司や部門としての支援は充分でしたか?。上司から、頭ごなしに否定されたり、他人と比較されたら、どういう気持ちになるでしょうか。」(同)
■さて、あなたの労いの言葉は?
――簡単なようで難しいのが上司の振る舞いである。私は以前、人事専門のコンサルティング会社に所属していたが、担当役員の口ぐせが「お前なんか死んでしまえ!」だった。成果の挙がらない社員のウイークポイントを徹底的に攻撃するのも常套だった。「お前のようなF大にはロクな奴がいない!」など、人格否定も凄まじかった。
沖本氏は、年度末のいまの時期だからこそ、労いの言葉は重要だと主張する。「上期は目標達成していたのにどうしたの?」「昨年、好調だったときは皆の前で発表してくれたよね。どうした?」。ほめる以外にも、部下がやる気をだす言葉はたくさん存在する。上司は部下への労いと感謝を忘れてはいけない。
参考書籍
『リーダーのコミュニケーションの教科書』(同文館出版)
尾藤克之
コラムニスト