十日ほど前「マイナンバーで住宅ローン契約」と各紙が報道した。三菱東京UFJ銀行などが開発したシステムで、マイナンバーカードに搭載した公的個人認証の署名用電子証明書を利用して住宅ローン手続きを電子化するというものである。多くの記事には「マイナンバー」とあったが、このシステムでは「マイナンバー」そのものは扱わず、「マイナンバーカード」の公的個人認証機能が利用される。手続きは自宅で完結し、契約書を紙にして取り交わす際に求められる印紙の貼付も不要になる。
「マイナンバー」と「マイナンバーカード」のどこが違うのかわかりにくい話である。「マイナンバー」の利用は共通番号法が定める行政手続きに限定されるが、「マイナンバーカード」の公的個人認証機能の利用は共通番号法の範囲外であり、民間で利用できるというわけだ。いずれにしろ、「マイナンバーカード」の利用範囲を拡大させる点は総務省の推進するマイキープラットフォームと同様で、その取り組みは評価できる。
しかし、「マイナンバー」そのものが取り扱えるようになれば、いっそう利便が増す。住宅ローンの利用者の大半は住宅取得控除の確定申告を行うが、「マイナンバー」を利用して銀行から税務署に自動的に通知が届くようにすれば、確定申告は省略できる可能性があるのだ。この点で三菱東京UFJ銀行のサービスはまだ中途半端、いっそう前に進める必要がある。
「マイナンバー」の利用範囲の拡大、特に民間での利用については、国会での議論も進んでいない。しかし、この住宅ローンサービスの例が示すように範囲の拡大は国民の利便を増す。小学校設立詐欺を議論するよりも優先度は高い。