国連PKOの行く末は、トランプ政権の出方次第

篠田 英朗

国連PKO公式サイトより(編集部)

『現代ビジネス』さんに、あらためてPKO法の現状を考える拙稿を掲載していただきました。

先日のアメリカ出張でニューヨークに立ち寄った際には、国連職員の人に、新しい事務総長の話を聞かせてもらうつもりが、「結局それもトランプ政権との付き合い方になる」という話題に流れていきました。世界中でトランプ、トランプ、ですが、トランプ政権は、国連へのアメリカからの拠出金を数年のうちに半分にしようとしているので、国連にとっては頭が痛い状況になっているわけです。

アメリカは、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)とWFP(世界食糧計画)に巨額の資金提供をしてきているのですが、もし本当にアメリカからの拠出金が半減したら、二つの機関にとっては相当な打撃になることは間違いありません。危機が続く中東に加えて、アフリカ東部地域では飢饉が危機的状況になっており、困難な状況です。

ニューヨークの国連本部では、PKO予算の削減が大きな課題です。PKO予算は、分担金比率にもとづいて加盟国から提供されるため、安全保障理事会で拒否権を持つアメリカが強烈なプレッシャーをかけてくれば、必要性の低いPKOミッションは早期に終了させ、巨大ミッションは規模を縮減していかなければなりません。国連事務局がその方法を検討しなければならないのです。

一部報道で、南スーダン撤収後の自衛隊派遣先として言及されたキプロスにおける小規模PKOミッションは、増派の可能性がないことはもちろん、終了にならないかどうかが問題になるミッションでしょう(なお国連PKOとしての活動終了には幾つかのパターンがあり、ヨーロッパでは、地域機構等への活動委譲などもありえます)。

南スーダンはどうなるのでしょう。まだまだトランプ政権は、そこまでの各論に入っていく余裕はないように見えます。ただし「危ないから活動終了」ということは、ありえません。現在、南スーダンを含む「サヘル」地域は、中東に次いで、世界の紛争甚大地域となっていますが、イスラム過激派勢力の浸透も著しいものがあります。

強い関心の対象ではあっても、直接介入しない地域なので、アメリカは国連PKOによる最低限の管理を後押しする、というパターンの典型が、南スーダンでした。ただしアフリカ諸国の地域機構を通じた活動を支援する流れも強く存在しており、国連PKOだけが唯一の平和活動ではありません。様子見の段階になっています。


編集部より:このブログは篠田英朗・東京外国語大学教授の公式ブログ『「平和構築」を専門にする国際政治学者』2017年3月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。