福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律案に対する代表質問

民進党の細野豪志です。私は、民進党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました「福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律案」について質問いたします。

はじめに

東京電力福島第一原発事故から6年が経過しました。東日本大震災の被災地はどこも復興の途上にありますが、原発事故の影響を受ける福島県は帰還困難区域を抱えるなど、より困難な状況が続いています。本特措法は、そうした福島が置かれている状況に対し、政府が責任を持って対応することを目的に制定されたものです。

今年の3月11日、私は福島県で行われた追悼式典に出席しました。東京から福島の会場に、サテライト放送で流れてきた安倍総理の式辞には、率直に言って強い違和感を覚えました。昨年まで式辞の中にあった「原発事故」という言葉が消えていたからです。あの事故がなければ、現在の福島の厳しい状況はありませんでしたし、本特措法自体、必要ありませんでした。式典後、内堀福島県知事が違和感を口にされていたのは、福島県民の声を代弁したものと捉えるべきです。

総理の式辞からは残念ながら被災地に対する気持ちも、感じることができませんでした。確認してみたところ、10段落で構成された式辞の中で、9つの段落については、昨年と全く同じか、前後の言葉を入れ替えただけで文面は同じでありました。唯一異なる文面となっている段落の中で「原発事故」という言葉が消えているのです。

総理がこのような認識では、どんな法案を通そうとも、文字通り「仏作って魂入れず」となりかねません。安倍総理と閣僚の皆さんに、もう一度、原発事故を起こした政府の責任を自覚して頂きたいと思います。

特定復興拠点のあり方

原発事故の後、国は周辺11市町村の約8万1千人に避難指示を出しました。あれから6年が経過し、福島県民の努力と関係者の取り組みによって除染やインフラ復旧が進み、この春には新たに4町村、約3万2千人について避難指示が解除されました。

しかし、復興庁などが避難者の意向を聞いたところ、帰還を希望する住民は1割から2割にとどまり、「戻らない」とした人が半数を超えます。また、すでに避難指示が解除された区域でも、実際に戻った住民の割合は平均で13.5%にとどまります。人口減少と高齢化が極端に進んだコミュニティをどのように再生するかは、すでに大きな課題となっています。

昨年12月20日に閣議決定された「原子力災害からの福島復興の加速のための基本方針」において、「帰還困難区域に特定復興拠点を設定し、5年後をめどに避難指示を解除」するという重要な方針が示されました。

事故から6年が経過し、帰還困難区域の中でも放射線量が下がった地域が出てきています。特定の地区を復興拠点に認定し、除染やインフラ再建に取り組むというアプローチについては賛同します。しかし、帰還を望む住民の数は減少しており、復興拠点がコミュニティとして機能するには、外から移り住む人が出てくる必要があります。全面買収方式によって新市街地を整備するなど政府が関与するとしても、持続可能なコミュニティをつくるには相当の困難が予想されます。こうした困難を乗り越え、どのような復興拠点をつくるつもりなのか、復興大臣の答弁を求めます。また、それぞれの自治体に、幾つの拠点をつくるつもりなのかについても、合わせてお答えください。

帰還困難区域の将来像

2011年12月、放射線量が年50ミリシーベルトを超えた大熊町、双葉町や浪江町など7市町村が「将来にわたって居住を制限することが原則」とした帰還困難区域に指定されました。当時、閣僚の間では、帰還困難区域という厳しい名称を使うことについて大議論がありました。

故郷を追われた方々にはまことに申し訳ないことではありましたが、あえて厳しい表現を使うことで、そうした方々に、新たな生活を選択していただきたいと考えました。帰還が困難であることを明確にすることによって、東京電力は、この地域に住んでいた2万人以上の避難住民に対し、戻れないことを前提に損害賠償を支払うことになりました。

昨年12月20日の基本方針では、「たとえ長い年月を要するとしても、将来的に帰還困難区域の全てを避難指示解除し、復興・再生に責任を持って取り組むとの決意」が示されています。安倍総理ご自身も、同様の決意を述べておられます。あえて申し上げます。本当に、「帰還困難区域の全てを復興・再生する」ことができるのでしょうか。耳障りのいいことだけを言って、実現できなければ、福島の皆さんをもう一度裏切ることになってしまいます。私はそのことを懸念します。

実際、特定復興拠点以外の帰還困難区域については、今回の法改正の対象とはなっていません。5年後をめどに国の避難指示が解除される「特定復興拠点」の面積は、帰還困難区域の5%程度にとどまる見込みです。復興拠点を整備するだけでも相当の困難が予想される中で、それ以外の地域については、避難を解除するめどは全くたっていないのが現実です。6年が経過し、被災者の皆さんと、国民に対して、帰還困難区域の将来像を示す責任は政府にあると考えますが、復興大臣いかがでしょうか。

汚染者負担原則の修正と国民負担

昨年12月20日閣議決定された「基本方針」では、除染についても重要な方針転換が行われました。すなわち、「特定復興拠点は除染とインフラ整備を一体的に行い、費用は東京電力に求償せずに国が負担する」というものです。

これまで、除染については、いったん復興予算から費用を出していましたが、「汚染者負担の原則」に基づき、原発事故の当事者である東電に費用を請求するかたちで実施されてきました。しかし、政府は、東京電力が帰還困難区域の住民に多額の賠償を実施してきていることを主な理由として、特定復興拠点の除染については、政府が負担するとしています。

これでは、第一原発の廃炉や賠償で東電の負担が予想以上に膨らんだ末の、事実上の東電救済ではないかとの疑念が消えません。新たな国民負担が生じることについて復興大臣はどのように説明するのでしょうか。また、今後、行われる可能性のある帰還困難区域の特定復興拠点以外の除染について東電に求償する可能性はあるのでしょうか。また、帰還困難区域全体でどの程度の除染費用がかかるのか、国民に説明していただきたいと思います。

もう一つ見過ごせないことがあります。「汚染者負担の原則」の例外を認めることが、今後の環境政策に重大な影響を及ぼす可能性があることです。東京電力福島第一原発事故は、わが国の歴史上、極めて重大な公害事案でもあります。こうした事案において、どのような論理で「汚染者負担の原則」の例外を認めるのでしょうか。また、東電以外の企業のモラルハザードをもたらす懸念はないのでしょうか。環境大臣に明確にご答弁頂きたいと思います。

風評被害への対処

福島では、2012年から、全てのコメの放射能検査が行われています。2014年度、1096万袋のコメの中からは、1袋も出荷基準値を超える放射性セシウムは検出されませんでした。それにも関わらず、福島県産の米に対して全農が支払う概算金は、史上最安値の一俵7000円台を付けました。

明るい兆しもあります。昨年の福島県産のモモの輸出量は30.6トンとなり、原発事故前の2010年を上回りました。事故直後だった2011年の秋、福島駅では、山形県産のモモが売られていました。よくここまで回復したと思います。関係者の皆さんの努力に心より敬意を表したいと思います。モモだけではありません。サクランボ、ブドウ、リンゴ、ブルーベリーなど、福島は果物の宝庫です。

こうした特産となっている果物や、キュウリなどの野菜は、福島県産のシェアが高く、代替が利かないために価格が戻ってきています。しかし、コメや魚介類のように代替が利くものについては、「福島県産」という理由で依然として低い価格での取引が行われています。

法案では、販売等の実態調査を行い、その調査結果に基づく指導や助言を行うこととされていますが、民民の取引を基本とする市場取引に対して、どのような指導・助言をするのでしょうか。復興大臣にうかがいます。

むしろ、風評被害を払しょくするためには、第一原発の廃炉を加速することと、県内各所に除染廃棄物が山積になっている状況を一日も早く終わらせることです。また、東京電力福島第二原発の廃炉の方針を明確にすることで、全国に先駆けて福島において脱原発を実現することも重要です。政府として、第二原発の廃炉方針を示すべきだと考えますが、経産大臣、いかがでしょうか。

被災者いじめ

最後に、子どものいじめ防止についてうかがいます。

原発事故後、浜通りに新設されたふたば未来学園高校の演劇部の公演が、先日、東京で行われました。高校生が実体験を演じた『数直線』という演劇に、私を含め多くの観客が涙しました。劇中、福島県外の避難先でのいじめの話がでてきます。3.11の時に小学生だった彼らの多くが、避難先でいじめを受けています。深刻な事態にもっと早く気がつくべきでした。いじめは子ども社会だけで起こるわけではありません。彼らの将来を考えた時、原発事故を原因としたいじめは、社会全体で根絶しなければなりません。

どのような方法でいじめを根絶するのか、復興大臣に質問します。

結び

ふたば未来学園の高校生を見ていると、福島は必ず復興するという希望を胸に抱くことができます。ただ、忘れてはならないのは、この6年間、彼らが葛藤の中で生きてきたという現実です。演劇部の高校生の中で、原発事故を扱うかどうか、論争があったそうです。辛い経験を演じるぐらいなら演劇部を辞めたいという高校生もいたとのことでした。しかし、彼らは原発事故の体験を伝えることを自らの宿命と捉えて、今も演劇を続けています。

宿命を福島の若者だけに負わせることは許されません。あってはならない原発事故を現実に起こしてしまった政府、国権の最高機関たる国会には、原発事故の被害を直視し、福島の復興を成し遂げる宿命があります。本院に議席を持つ我々一人一人が、その宿命を全うすべきであるということを申し上げて、私の質問を終わります。


編集部より:この記事は、衆議院議員の細野豪志氏(静岡5区、民進党)のオフィシャルブログ 2017年4月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は細野豪志オフィシャルブログをご覧ください。