フランス第5共和政の第10回大統領選挙は2017年4月23日(日)と5月7日(日)に実施される。フランス国民による直接投票によって大統領が決まる。
フランス大統領の選挙日程が2回予定されているのは、第1回目の投票で全体の過半数の票を取った候補が出ない際に、投票率の上位2名によって決選投票が行われるためである。1965年以降、第1回投票で大統領に決まった候補者はなく、今回もこれまでの世論調査などからも決選投票は不可避とみられている。
今回の大統領選挙が最も注目されているのが、極右政党、国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首である。ルペン党首はユーロ圏離脱や欧州連合(EU)離脱の国民投票実施を掲げている。英国のEU離脱や米国でのトランプ大統領の登場の流れがフランスでも強まるとなれば、このルペン党首が勢いづくことになる。
欧州でポピュリズムや極右の流れがさらに加速されるのかどうか。その試金石とされたのが3月15日に実施されたオランダの議会下院の選挙であった。
オランダの議会下院の選挙では、ルッテ首相が率いる中道右派の与党・自由民主党が8議席減らすものの33議席を獲得し、第1党の座を維持した。ウィルダース氏が率いる極右政党の自由党は20議席を獲得したが、当初予想されていた倍増の30議席までには至らなかった。
フランスの大統領選挙でも、ルペン党首の人気の高まりを懸念したEU残留派の有権者を中心に、オランド大統領のもとで経済相を務めたマクロン候補への支持に拡がりを見せている。このため、無所属のマクロン候補が有力候補となりつつある。39歳という若さもその魅力のひとつとなっている。ところがここにきてダークホースが出てきた。
オピニオンウェイが6日に公表した調査によると、4月23日の第1回投票でのルペン氏の支持率は25%、マクロン氏は24%となっていたが、共産主義の支持を集める急進左派のジャン・ルク・メランション氏が追い上げを見せて、1ポイント上昇して16%となったのである。ちなみに5月7日の決選投票予想はマクロン氏が60%で、ルペン氏の40%を上回った。(NEWSWEEK)。
以前に与党・社会党など左派陣営のブノワ・アモン氏と共産主義の支持を集める急進左派のメランション氏が、協力の可能性をめぐり協議していることを明らかになったが、これは決裂したようである。
2002年のフランス大統領選挙の際には1回目の投票で現職のシラク大統領に次いで、極右政党・国民戦線(FN)のジャンマリ・ルペン党首(マリーヌ・ルペン氏の父)が2位で決選投票に進んだ。決選投票では1回目の選挙で敗れた左派の社会党候補の支持者もルペン氏を当選させないために、ライバルであった保守系政党のシラク氏支持に回り、シラク氏が大差で勝利していたということもあった。
今年のフランス大統領選挙では、ルペン氏が大統領選挙で勝つことはないだろうとの予想がいまのところ大勢を占めているが、この予想が昨年の米国大統領選挙の時のように覆されることとなれば、フランスのユーロ離脱も意識される可能性がある。いまのところその懸念は後退しつつある。しかし、今後の動向次第ではフランス大統領選挙が混戦模様となり、決選投票でのルペン氏敗退とのシナリオに不透明感が強まることもありうるため、注意が必要となる。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年4月12日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像はWikipediaから)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。