ドワンゴ川上会長が語る「どわんご保育園」

スゴいい保育

前回の「ドワンゴ川上会長の育休取得と、妻との平穏な家庭生活のコツ」に引き続き、株式会社ドワンゴの川上会長との対談をお送りします!

保育園があるなら産んでみようかな

-駒崎
一昨年、急遽ドワンゴが保育園を作ることを発表をされ、当時評判になりました。どのような思いで作られたのでしょうか。また実際運営してみてどうでしょうか。

-川上会長
実は以前から社内から社内託児所が欲しいという要望はあったんですよね。ところが実際に作ろうとして、アンケートをとったら、実際に利用するという社員は一人もいなかったんです。

今回は、その時よりも随分と社員も増えていたし、結婚している人も増えていたので、さすがに利用者はたくさんいるだろうと思っていたのですが、保育園を開設してみたら結局2-3人しか利用者が集まらなかったんです(笑)

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ドワンゴ本社オフィス内に開設された事業所内保育施設「どわんご保育園」

-駒崎
ええええ。要望があったから作ったのにそれはつらいですね・・・。

-川上会長
投資対効果で考えたら完全に失敗ですね(笑)ただ、最初はそうだったんですが、2年ぐらいたったら、いつのまにか満員になっていたんです。どうも、子どもを産んで働いていいんだよっていう社員へのメッセ-ジになったようで、保育園ができてから子どもを作ろうと決めた社員がたくさんいたようなんです。社内がちょっとしたベビーブームみたいになったんですよ(笑)

-駒崎
それは素晴らしいですね。社員に対するメッセージとしてはとてもわかりやすいですよね。

どわんご保育園園内4_R.jpg

どわんご保育園内の様子

-川上会長
そうなんです。これはあとで聞いた話なのですが、スタジオジブリも同じだったみたいなんですよね。ジブリも宮崎駿さんが社内保育園を作ったとき、一年目は利用者があまりいなかったそうなんです。

でも、同様に保育園があるなら、子どもを産んでみようという社員がたくさん現れて、ジブリでもミニベビーブームみたいなのが起こったそうです。なので、やっぱり企業がそういう姿勢を見せるっていうのは本当に少子化対策として効果があるんだなと思いましたね。

将来的には国家が子どもを育てるしかない気がする

-駒崎
実際に子育てをしてみて、日本の保育や子育てに何か思うことはありますか?

-川上会長
実際に子育てをしてみて本当に無理だと思いましたね。子どもが熱を出しただけで、仕事を切り上げて保育園にお迎えにいかないといけないとか、事情を理解しない企業から見たら、やはり大事な仕事は任せられないとなってしまいます。企業側も含めて社会全体で日本はもっと子育てに対する理解と支援をしないとダメだと思います。特にシングルマザ-は本当にかわいそうだなと思います。

子育てだけでも大変なのに、今の日本の環境ではまともな労働環境につくことも難しい。これは本当になんとかしてあげたい。いろんな問題が起こるのは当然ですよ。シングルマザー無罪法とか出来ないですかね(笑)

-駒崎
それはすごいですね(笑)でも、ほんとに仰る通りなんですよね。現在の日本では、ひとり親家庭の54%は貧困状態にあり、子どもの6人に1人が相対的な貧困状態にあります。その大きな要因にシングルマザ-の貧困という問題があるので、本当に今の日本は厳しい状況といえます。

-川上会長
ほんとですよね。離婚してもほとんどの父親はろくに養育費も払わないですしね。

-駒崎
そうなんですよ。養育費の支払い率は二割ですからね。

-川上会長
そうなんですよね。裁判に負けても払わないというね。こうなってくると、個人の努力でできる限界を超えている。しかも子育ての負担は女性だけに一方的に押し付けられがちです。僕は最終的には国家が子どもを育てるしかなくなっていくんじゃないかなと思います。

子育てをする女性は積極的に社会に出るべき

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どわんご保育園内も見学させていただきました

-駒崎
保育サ-ビスは子どもの発達のために必要なものというのが主軸にありますが、社会全体で見た時には、「子どもの家庭環境の格差を中和させる仕組み」という側面があるんですよね。例えばですが、家庭環境によっては子どもにとって悪い養育をしている場合もあって、そういう場合は子どもが親とだけ一緒にいることのほうが悪影響を及ぼす場合もあるわけですね。

それが保育園に行くことによってちゃんとした言葉使いでコミュニケ-ションが行われたり、栄養価のある給食を食べることが出来たりするわけです。そのため保育は、子どもの発達を0→10にするという面もありますが、社会全体で見たときにはマイナスを0に保つという仕組みでもあるんです。

-川上会長
そもそも専業主婦なんだから子育ては家で自分でするべきという価値観が間違っているなと思いました。毎日、子育てだけを家でずっとして、精神的な安定を保つのは非常に難しいですよ。子育てをする女性こそ、積極的に社会に出ていったほうがいい。子育てだけじゃなく社会とも接点を持たないと、母親の心が持たないですし、子どもにだって悪影響だと思います。もともと人間は子どもを一人で育てるように出来てないんですよ。

-駒崎
そうですよね。やはり「子どもを社会で育てる」という視点は本当に重要なことだと思うんです。

-川上会長
核家族化で本当は一人でなんて育てられないのに、その負担を日本社会は女性にすべて押し付けたんだと思います。
仕事ばかりかまけて夫婦仲が崩壊したという話をよく聞きますが、あれは妻や子どもへの愛情・気配りの欠如だとばかり思っていました。でも、間違いでした。夫婦仲の崩壊のほとんどの原因は子育てというとてつもない重労働から逃げた怒りから来ているのだと思います。

たとえ専業主婦であっても、子育てを女性にだけ押し付けてはいけない。むしろ、妻のこと、子どものことを考えるならば、専業主婦ではなく、共働きで子どもを育てるべきだと思いますよ。子どもの言葉や社会性の発達などを考えても、親も社会に出ていくほうがいい。しかし、今の日本は共働きをしながら、子どもを育てるということが非常に困難で、それを実現するにはやはり社会的なサポ-トは必須ですよね。

-駒崎
まさに本当にそのとおりだと思います。完全に偏見なのですが、IT業界の経営者という側面や、川上会長の普段のテクノロジ-寄りの世界観からの発言などのイメ-ジからこのような話が聞けて、いい意味で意外でとても心強くうれしいです(笑)

対談の続き近日公開!


【4月19日はみんなの保育の日!】

※4月19日が4(フォ-)19(いく)であることから、同日を「みんなの保育の日」(※日本記念日協会に正式認定取得済)とし、イベントの開催日としました。

4/19当日は、六本木ニコファーレにてイベント開催予定◎
(入場無料/授乳&オムツ替えスペースもご用意しています)

詳細はこちら
http://419.jp/

イベントページはこちら
https://www.facebook.com/events/1258538517564312/

※イベント当日は、下記サイトにてニコニコ生放送も実施します
http://live.nicovideo.jp/watch/lv293012379

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編集部より:この記事は認定NPO法人フローレンス運営のオウンドメディア「スゴいい保育」より、2017年4月12日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「スゴいい保育」をご覧ください。