NHK放送文化研究所が参加した国際比較調査(2015年)によると、日本人有職者のうち今の仕事に「完全に満足」「満足」「やや満足」している割合は合計60%であった。
一方で、政府の『働き方改革実行計画』では、「残業時間の上限規制」と「同一労働同一賃金」が二本柱である。国際比較調査でも、週に50時間以上の労働をしている人の63%がストレスを感じていると出ているので、「残業時間の上限規制」は確かに重要な課題である。
そもそも、人は「報酬」「時間」「人間関係」「勤務地」「やりがい」など様々な要素をはかりにかけて就業する。国際比較調査によれば、仕事の満足度に強い影響を与えたのは、「仕事のおもしろさ」「人間関係」「勤め先への誇り」であったそうだ。この結果は「残業時間の上限規制」だけでは満足度が改善されないことを示唆する。
「時間」以外の指標を改善できるかを考えるのが重要だが、デジタルにはそれに応える可能性がある。たとえばテレワーク。国土交通省の調査によれば、全労働者のうち2.7%が週1日以上終日在宅で就業している。彼らは、「通勤や移動の負担軽減」、「自分のために使える時間の増加」、「仕事に集中できることによる業務効率向上」を実感している。
経済産業省「雇用関係によらない働き方」に関する研究会のウェブ調査結果によれば、個人事業主(フリーランス)の年収は単純平均で雇用者全体よりも高く、週当たりの労働時間は大きく変わらない。スキルが高い、すなわち顧客に対する価格交渉力が強いフリーランスのうち、主たる生計者として世帯を支えている者では年収1000万円以上が14%占めた。これらの層では研究開発系の職種が17.6%、クリエイティブ系が36.8%を占めているが、いずれもデジタルと親和性が高い職種である。
デジタルを駆使すれば、「報酬」「時間」「人間関係」「勤務地」「やりがい」などの中から、その人が重要と見なす要素が高まり、仕事への満足度も向上する可能性がある。デジタル社会の楽しい働き方が実現するために政治・企業・教育は何をすべきかを、4月27日に議論する。ぜひ、ご来場ください。