楽しい働き方と雇用の流動性

記事『「デジタル社会の楽しい働き方」って何だ』で、デジタルを利活用すれば楽しい働き方が実現する可能性があると書いた。その前には『雇用の流動化が働き方改革の本丸』を投稿した。

二つの記事をつなぐポイントは雇用な流動化である。デジタルを利用すれば、「報酬」「時間」「人間関係」「勤務地」「やりがい」など多様な要素から、一人ひとりが労働の楽しさを実現するために個々に重視する要素が高められる。楽しい労働は組織内でも組織外でも実践できるので、永年勤続型・正社員雇用型だけが人々の目標ではなくなる。

ここで疑問が生まれる。雇用の流動化は生産性を高めるのだろうか。

該当する論文を見つけることができた。経済産業研究所の山本勲・黒田祥子両氏が書いた「雇用の流動性は企業業績を高めるのか:企業パネルデータを用いた検証」がそれである。研究成果の中核は次の一文である。

日本的雇用慣行企業に近いタイプに類型される企業では中途採用のウエイトを高める形で雇用の流動化を進めると、利益率や労働生産性が上昇する傾向があることや、逆に、ブラック企業に近いタイプに類型される企業では中途採用のウエイトや離入職率を高めると、利益率や労働生産性の低下を招く可能性があることなどが明らかになった。

日本的雇用慣行企業は流動性を高めたほうがよく、ブラック企業は離職率を下げるように職場環境を改善すべき、という結論である。直感的には当然と思われるが、これが2009年度から2015年度にかけてのパネル調査で、当初の2009年度は1677社、2015年度まで継続して調査できた企業が708社という大きなサンプルサイズで検証できた価値は大きい。

デジタルを利用して雇用を流動化し、楽しい働き方を実現するときがきた。デジタル社会の楽しい働き方が実現するために政治・企業・教育は何をすべきかを、4月27日に議論する。ぜひ、ご来場ください。